真相深層 アパレル、根深いセール病 1カ月繰り下げ、ル ミネが一石も…値引き効果薄く、利益率低下 2017/7/26 本日の日本経済 新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「真相深層 アパレル、根深いセール病 1カ月繰り下げ、ルミネが一石も…値引き効果薄く、利益率低下」です。





 毎夏恒例のバーゲンセールに駅ビル運営大手のルミネ(東京・渋谷)が今年、一石を投じた。開始時期を他社より約1カ月遅らせ、定価販売を衣料品ブランドに促した。「ユニクロ」など低価格品やインターネット通販の広がりで値引き品の魅力は薄らぐ。セールありきの事業運営に陥ったアパレルは疲弊し、本来は歓迎すべきルミネの要求に応えられずにいる。

夏本番なのに…

 「これから夏本番なのに売れ筋商品を初めから値引きするのはおかしい」。ルミネの新井良亮会長は今夏のセール開始を7月28日に繰り下げた理由を話す。

 ルミネなどの商業施設は入居ブランドに価格戦略を強要できない。全館挙げてのセールは集客効果が高いことから、アパレルの多くは商業施設の求めに応じるのが通例。

 だが7月上旬、ルミネ有楽町(東京・千代田)を訪ねると「限定プライス」などをうたいほぼ全店が2~4割値引きしていた。他の商業施設のセール価格と同等だ。あるアパレル幹部は「他店への配慮もありルミネだけ違う価格を提示するのは難しい」と打ち明ける。

 セールの繰り下げは業界で影響力が大きい三越伊勢丹ホールディングスが先行している。百貨店はアパレルとの販売契約が商業施設と異なり値決めへの関与が大きい。アパレルからは「伊勢丹用に定価商品を残す必要がある」(関係者)と早期から一斉値引きできないもどかしさが漏れる。

 セールは在庫処分が本来の目的で利益率は下がる。それでも値引きを急ぐ背景には小売店と築いてきた商慣行がある。

 夏のセールは1990年代は7月中旬ごろから始めていたが、デフレを背景に消費が停滞するなか、「早い者勝ちだから」(ルミネの新井会長)と商業施設各社が集客効果を見込み、先を争って前倒しした。現在は6月下旬からの開催が定着。各社は夏物を例年4月前後から販売するが、肝心の夏場はほぼ全期間で安売りとなる。

 セール期間中に店頭在庫が品薄となれば収益性を度外視し、「値引き販売するための商品を追加生産」(関係者)することも常態だ。

 だが値引きの魅力はここ数年で薄らいだ。「ユニクロ」や「ZARA」といった低価格の衣料品が存在感を高め、「ゾゾタウン」などネット通販では似た商品の価格をブランドの垣根を越えて調べられる。中古品流通市場も生まれ、消費者の目は厳しさを増す。総務省の調査では百貨店や一般小売店での衣料品購入額はこの10年で減少。一方でネット通販は伸びた。

 アパレル会社の健全性を示す指標に、定価販売率がある。従来は70%が目標だったがコンサルティング会社、カート・サーモン(東京・港)の河合拓マネジング・ディレクターは「今は4割にも達さない」と指摘する。

 収益が落ちてもなおアパレルはセールの集客効果に頼り、店舗では値引き分をあらかじめ上乗せする例もある。

値付け方法転換

 オンワードホールディングスは今春、ネット通販の専用商品を発売した。ワンピースが1着税別5900円など同社の最安価格帯で提供し、値引きは原則しない。「セール値下げを前提とした値付けをしない」(関係者)ため。ネット通販に比して店舗商品の割高感は解消されないままだ。

 ルミネがアパレルに突き付けたのは、こうした対応の見直しに他ならない。商品の魅力を高めて適正価格を付け、商品力と接客で人を呼ぶ、という原点回帰を求める指摘だ。アパレルも表向き「あるべき姿だ」(ジュンの佐々木進社長)と歓迎するが、実態はセール依存から抜け出せない。

 「今は売れるものが分からない」。大手アパレル幹部の嘆きに病巣の根深さが表れる。米国では米エバーレーンが原価を示すネット通販を始めた。売れる商品づくりという根源的な問いに答えない限り、真の解決策はない。(奥津茜、岩戸寿)



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