真相深層 コバルト不足、EV普及の壁 急な増産難しく 20 18/1/11 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「真相深層 コバルト不足、EV普及の壁 急な増産難しく」です。





 電気自動車(EV)製造にかかせないレアメタル(希少金属)のコバルトが不足し、EV普及の足かせとなる可能性が浮上している。コバルトは生産方法と主産国の内情という2つの理由から増産が難しい。大手自動車メーカーが確保を急ぐ動きも出ており、不足感や投機資金の流入で国際価格はこの2年間で3倍以上に上昇している。

 「ものを出せないと言われたのは初めてだ」。都内の専門商社の担当者は頭を抱える。2017年12月上旬にコバルトを短期契約で調達しようとしたところ、中国や欧米の取引業者から「17年分の在庫は尽きた」との返答があったという。

 商社は半年から1年の長期契約でコバルトを調達する場合が多いが、顧客の要望により、最近は短期での契約も増えている。専門商社の担当者は「需要の増加で取引業者側の在庫は減っている」と先行きを懸念する。

 コバルトはEVの心臓部となるリチウムイオン2次電池の正極材に使う。米地質調査所(USGS)の推計では、16年の鉱石ベースの生産量は12万3000トン。電池部材向けの需要増で10年前から8割増えたが、ここ数年は頭打ちだ。

 国際指標となるロンドン市場のスポット(随時契約)価格は現在、2年前の3倍以上となる1ポンド35ドル超に高騰。コバルトはリチウムイオン2次電池の製造コストの1~2割を占めるとの見方もあり、EV製造に与える影響は少なくない。

 ある調査会社の試算によると、16年の世界需給(地金換算ベース)は9万6000トンの需要に対し供給は9万5500トン。在庫は3万トン前後あるというのが業界の一致した見方だ。

 「今回の価格上昇は先高を見越した投機筋の買いが膨らんだことによるもの」(別の商社担当者)との見方もある。もっとも、将来に目を向けるとEV向けの伸びで不足感が一段と強まる可能性は否定できない。

 トヨタ自動車とパナソニックは17年12月、EVなどに使う車載用電池で開発を含めた協業を検討すると発表した。EV1台あたりに使うコバルトの量は「車種にもよるが、10キロ前後の例が多い」(国内の電池部材メーカー)。調査会社の富士経済(東京・中央)によると、21年のEVの世界販売台数は152万台になる見通しだ。

 コバルト需要のうち自動車やデジタル家電向けのリチウムイオン2次電池が5割を占める。富士経済は、リチウムイオン2次電池向けのコバルト需要量が16年の4万5900トンから21年に7万5000トンまで増えると試算する。

 一方で、21年のコバルト供給量は13万トン前後とみられる。現在予想されるペースでEV普及が進むと、コバルト不足に陥る可能性がある。

 メーカー側がコバルトを確保する動きも出てきた。独フォルクスワーゲン(VW)は17年秋に採掘会社とかけあい、長期供給の確保に向けた入札を実施したもようだ。

 コバルトは銅やニッケルの副産物で「需要が増加しているからといって、即座に対応できるわけではない」(英調査会社CRUのジョージ・ヘッペル氏)。価格低迷で銅やニッケルを減産すると、コバルトの供給も絞られる構図だ。ヘッペル氏は22~23年ごろにも需給が逼迫する可能性があると指摘する。

 生産地も偏在する。世界の鉱石の半分以上をコンゴ民主共和国が供給し、中国やカナダといった他の生産国のシェアはそれぞれ1割未満だ。

 採掘環境の改善も課題だ。コンゴ民主共和国では鉱山での児童労働が問題視されている。

 アムネスティ・インターナショナルによると、同国の一部の鉱山で子供が手掘りで採掘に携わっているという。「企業はコバルトのサプライチェーンを注視する必要がある」(アジア太平洋資料センターの田中滋事務局長)。人道的な立場から、需要家は同国の生産者にコバルトの増産を迫りにくい。

 EVが現在の予測通りに普及するかは見方が分かれるが、将来的にコバルトの需要が増えるのは確実。今後はカナダやロシアといった欧米産コバルトの争奪戦が始まるかもしれない。

(落合修平)



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