真相深層 コメ、縮む「1俵の格差」 業務用が高騰、店頭 は豊作で安く 飼料米・ブランド競争響く 2017/2/17 本日の日本 経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「真相深層 コメ、縮む「1俵の格差」 業務用が高騰、店頭は豊作で安く 飼料米・ブランド競争響く」です。





 生産調整(減反)の廃止が2018年に迫るコメ市場にほころびが目立ち始めた。豊作にもかかわらず、中食や外食で使う業務用のコメが不足。政府による飼料用米への転作推進策や産地の高級ブランド戦略に消費の減少が絡み合い、安価なコメが価格水準を切り上げた。ブランド米と価格が並び「1俵の格差」は縮んでいる。

 1月下旬、弁当やおにぎりを製造する中食企業が主体の日本炊飯協会(東京・豊島)の会合が都内で開かれた。業務用のコメが調達難に陥り、福田耕作会長は「米国産も品質は同格」と安いコメを作らない産地をけん制した。

 16年秋のコメの収穫量は750万トンで、10アールあたりでは544キログラムで過去最高水準となった。豊作にもかかわらず、「なぜ私たちが使うコメが不足しているのか」(中食大手、明治ライスデリカの奥正明社長)と戸惑いの声が広がっている。

 コメの需要は、味や産地にこだわったブランド米中心の家庭用が7割、外食や中食の業務用が3割。足元では小売店の店頭に並びやすいブランド米の生産が多く、業務用の安いコメが不足する。

 39年ぶりの豊作となった「新潟産コシヒカリ」は現在、産地のコメ業者からの出荷価格が60キロ(1俵)あたり1万4100~1万4400円。昨年秋の収穫以降、値段が下がり続けている。一方で、業務用で多用される「北海道産ななつぼし」はじりじりと値上がりして、ついにブランド米に肩を並べた。

政府が転作促す

 市場がいびつになった理由はどこにあるのか。日本炊飯協会の福田会長は「飼料用米を作りすぎだ」と指摘する。政府はコメの過剰作付けを抑制するため、補助金を出して飼料用米への転作を推進する。飼料用ならば、管理の手間は少なく、確実に補助金も得られる。低価格帯の業務用の作付けを飼料用米へと振り向ける農家は多い。

 見栄えの美しさから名付けられ、栃木県のブランド米だった「月の光」。産地のフラッグシップになるような人気を得られず、ブランド米としての看板を下ろして飼料用米の専用銘柄へと衣替えした。新潟県ではコシヒカリを飼料用として出荷する農家もいる。16年産は飼料用米が約48万トン作られ、2年で2.6倍に膨らんだ。

 ただ、市場では補助金を浪費する飼料用米政策への逆風は強い。推進する立場の農林水産省は1月、産地間で激化するブランド米の生産競争への懸念を示す資料を作成した。「高価格帯のコメは130万トンの過剰になっている」。これから稲作りを始める各産地を農水省の職員が訪問して説明。需給ミスマッチの原因は飼料用米への転作よりもブランド競争にあると指摘する。

 最近は老舗ブランドの新潟産コシヒカリを筆頭に、山形県の「つや姫」や北海道の「ゆめぴりか」といった新興勢が増えている。減反廃止を控え、今後も産地がブランド米の生産を拡大する動きは止まりそうにない。

 コメが足りない中、割安感の出ている小麦を選ぶ外食業者も出てきた。ファミリーレストラン大手の担当者は「パスタなど小麦を使うメニューを売り込む」と明かす。小麦は米国などの主産地で16年夏に豊作になり農水省による売り渡し価格が6年ぶりの安さになった。

味から生産性へ

 生産者も業務用米に商機を見いだしつつある。農業法人、穂海農耕(新潟県上越市)は一般販売向けに生産していた約60トンのコシヒカリを17年産からやめる。飼料用米も補助金の見直しなど「政治リスクがある」(丸田洋社長)と見切りをつけ、業務用米に生産を絞る。外食や中食大手と販売契約を結べば、コメ自由化時代でも勝ち残れると判断した。

 2月10日、宮城県栗原市でコメ卸大手、ヤマタネが主催するコメ農家の表彰式が開かれた。従来と異なるのは業務用米の味だけでなく、単位面積あたりの収穫量も評価のポイントになった点だ。約200人が埋める会場で登壇した地元農協の大内一也氏は「コメ作りは『1俵いくら』から、『10アールあたりいくら』と考えるようになった」と変化を強調した。

 時代遅れだったコメ市場。味だけを磨く時代は終わり、生産性を追求する動きが本格的に進み始めた。

(筒井恒)



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