真相深層 サウジ、ロシア接近の思惑 サルマン国王、初の 訪ロ米、石油の中東依存急低下 2017/10/28 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「真相深層 サウジ、ロシア接近の思惑 サルマン国王、初の訪ロ米、石油の中東依存急低下」です。





 長く親米路線を貫いてきたサウジアラビア。そのサウジが急速にロシアに近づいている。サルマン国王が初めてロシアを訪れ、プーチン大統領と会談した。歴史的な対ロ接近に潜む思惑は何か。

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4日、モスクワ郊外の空港で側近に支えられながらタラップを降りるサウジのサルマン国王=ロイター

 サルマン国王のロシア初訪問という歴史的イベントは、不吉なハプニングから始まった。

 4日、モスクワの空港。専用機に接続された特製のエスカレーター式タラップがいきなり停止し、高齢のサルマン国王が階段をこわごわ歩いて降りるはめになった。肝を冷やした側近が国王が転倒しないよう、あわてて手を伸ばす姿がテレビカメラにとらえられた。

 「多くの問題で立場は一致している」。国王とプーチン大統領は関係改善を演出し、エネルギーや経済協力を打ち出した。両首脳はロシアの最新鋭地対空ミサイルシステム「S―400」の購入で仮契約をかわした。

 両国はロシアがソ連の時代から対立してきた。ソ連の崩壊は国内の経済が破綻して自滅したことが原因だが、決定的な一撃は米国とサウジが1980年代に戦略的に進めた原油安政策だった。

 サウジが外交政策の柱としてきたのは米国との「特別な同盟関係」だ。45年、ルーズベルト米大統領はヤルタ会談からの帰路を変更してスエズ運河に立ち寄り、アブドルアジズ初代国王と会談。「サウジが石油を安定供給する代わりに米は体制を守る」と約束した。

 なぜ、サウジとロシアは急接近しているのか。すぐに頭に浮かぶ現実的な理由がふたつある。

価格底割れ防ぐ

 第1は石油の価格を下支えしたいという一致した利害関係だ。サウジではサルマン国王の息子のムハンマド皇太子が、石油に頼らない経済をめざす大がかりな改革を進めている。その目玉は来年の国営石油会社サウジアラムコの新規株式公開(IPO)で、成功の条件は石油価格の安定だ。

 ロシアは来年3月に大統領選がある。出馬して再選を目指すとみられるプーチン氏にとっても価格の底割れは避けなければならないシナリオだ。

敵情報を共有

 第2はイスラム過激主義という共通の敵の存在だ。プーチン政権やサウジ王室を敵視する過激組織についての情報を共有したいねらいがある。

 しかし、もっと本質的な理由は別のところにある。イラク戦争のトラウマを引きずり、内向き姿勢を強める米国の「中東離れ」という現実だ。

 トランプ大統領が初の外遊先に選ぶなど米サウジ関係は蜜月に映るが、実は相互の不信感は根深い。2001年の米同時テロの遺族がサウジ政府を訴えることができる法律が昨年、米国で成立し、両国間に時限爆弾のように突き刺さっている。

 トランプ氏は医療保険制度からイラン核合意、温暖化対策に至るまで前任のオバマ氏のレガシー(遺産)を否定することに躍起だ。ところが、できるだけ中東との関わりを減らしたいという外交姿勢では一致する。

 トランプ氏は就任した直後こそシリアのアサド政権をミサイル攻撃したものの、和平や復興で指導力を発揮しようという姿勢はみえない。米がいない空白を着々と埋めているのがロシアだ。

 米が中東への関心を失うのも無理はない。03年のピーク時に日量230万バレルあったサウジからの石油輸入は直近の7月に80万バレルまで減った。技術革新で自国の生産が増えた米国は近い将来、中東からまったく石油を輸入しなくても済むようになるかもしれない。

 大きなリスクを抱えるのはアジアだ。中国を中心とする製造業のサプライチェーン(部品供給網)は中東の石油・天然ガスに大きく依存している。その安全を守ることに責任を果たしてきた米国の撤退は、世界の経済にとってのリスクだ。

 サウジとロシア首脳による「S―400」の商談が持ち上がった直後、米国務省は、サウジが切望していた地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の売却をあわてて発表した。中東での影響力低下はめぐりめぐって米国に跳ね返ってくる。そんな懸念は少なくともいまのところ、なんとかぎりぎりの水準で共有されているようだ。

(リヤド=岐部秀光)



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