真相深層 トランプ流減税ディール、再選へ保守・富裕層に巧みな 目配り 「双子の赤字」再来懸念も 2017/10/13 本日の日本経済新 聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「真相深層 トランプ流減税ディール、再選へ保守・富裕層に巧みな目配り 「双子の赤字」再来懸念も」です。





 トランプ米大統領と共和党指導部は9月末、最大の選挙公約だった大型減税の基本計画を公表した。連邦法人税率を35%から20%に下げる企業減税に注目が集まるなか、目立つのは共和党の支持層を狙った税軽減策だ。1986年のレーガン政権以来の大型税制改革は、2020年に迎える大統領選の再選に向けたトランプ氏の布石だ。

 「法人税率下げや個人所得税の簡素化、遺産税廃止も盛られ、大いに勇気づけられた」。トランプ氏が税制改革案を発表した9月27日、政治団体「繁栄のためのアメリカ人(AFP)」はこう礼賛した。AFPは米複合企業のオーナー、コーク兄弟が資金を出すとされる保守系団体だ。

 同兄弟の資産額はともに480億ドル(約5兆4千億円)。2人合わせればビル・ゲイツ氏すら上回る全米最大の大富豪だ。自由経済重視のリバタリアンとして草の根運動「ティーパーティー」を支え、共和党最大のパトロンとして知られる。

 その大富豪グループは実はトランプ氏の隠れた批判勢力だった。「がんか心臓発作を選ぶようなものだ」。兄のチャールズ・コーク氏は16年の大統領選前に、クリントン氏とトランプ氏の一騎打ちを苦々しく評した。露骨な移民制限を打ち出すトランプ氏は、リバタリアンと相いれない。

 トランプ政権が失敗し続ける医療保険制度改革法(オバマケア)の見直しも、コーク兄弟らが「制度の全廃が必要だ」と妥協しないことが影響してきた。共和党内で繰り返し反旗を翻す「下院自由議連」など保守強硬派は、富裕層グループが強力に資金支援する。

 税制改革はトランプ氏と富豪グループの“和解”の試金石だった。

 トランプ氏はまず、下院共和党が打ち出した「法人税の国境調整」を葬った。同案は輸入増税となり、石油精製が本業のコーク兄弟と相いれない。法人税の大幅引き下げなども盛り、富裕グループに満額回答を示した。政治資金4億ドルともされるコーク兄弟。トランプ氏には、次期大統領選で強力な援軍となる。

 トランプ氏の意外に巧みな目配りは、支持層の岩盤部分にもおよぶ。

 「課税の抜け穴をなくして低中所得層を守るものにする」。9月末に中西部インディアナ州で演説したトランプ氏は、個人税制改革をそう表現した。「抜け穴」とは課税所得を圧縮する様々な税控除を指す。中でも「地方税控除」の廃止は、「共和優遇・民主たたき」として波紋を呼ぶ。

 地方税控除とは、固定資産税や所得税、売上税といった州・地方税の支払額を、連邦税から差し引ける仕組みだ。民主党の支持基盤であるニューヨーク州やカリフォルニア州は控除額が平均年6千~7千ドルと大きい。控除がなくなれば、同地域は所得増税となりかねない。逆に州税が軽い中西部などは減税の恩恵を最大限享受でき、トランプ政権への支持をさらに強める可能性がある。

 「次の5年で企業投資を持ち上げてみせる」。トランプ氏と共和党指導部は5年限定で設備投資を即時償却できる優遇策も検討する。現在の税制では企業は設備投資のコストを数年かけて償却しているが、即時償却になれば投資初年度の税負担が大きく減り、投資の前倒しにつながる。

 トランプ政権が気に掛けるのは、中間選挙がある18年から20年の大統領選までの米国景気だ。この期間に設備投資を集中させれば、工場や店舗の新増設が進み、雇用自体も増える。米景気が一段と上向けば、現職大統領には最大の追い風だ。

 副作用もある。一つはドル高だ。国際通貨基金(IMF)は米国が国内総生産(GDP)の年1%に相当する財政拡張策を打ち出せば、5%分のドル高が進むと試算する。今回の減税規模は年1.2%に達するとされ、景気の過熱と金利上昇でドル高が加速すれば、トランプ氏が嫌う貿易赤字の拡大要因となる。

 トランプ氏が模すのは減税で米経済の成長力を高めた「レーガノミクス」。だがその反作用で生まれた貿易赤字と財政赤字の「双子の赤字」の拡大が、トランプ政権でも再来する懸念が残る。

(ワシントン=河浪武史)



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