真相深層 ロシア、米の「裏庭」に接近南米ベネズエラ再建、火種 に 軍事協力条件に債務猶予 2017/11/29 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「真相深層 ロシア、米の「裏庭」に接近南米ベネズエラ再建、火種に 軍事協力条件に債務猶予」です。





 世界最大規模の石油埋蔵国、南米ベネズエラは1300億ドル(14兆円強)もの債務の自力返済が難しくなった。1999年に誕生した反米左派政権の同国に対し、米国は黙認策をやめ、敵視政策にカジを切った。ベネズエラは債権国ロシアの支援を受け、経済・軍事で結び付きを強める。最大債権国の中国カードもちらつかせる。米国の「裏庭」南米でロシアや中国の存在感が増す。

地政学上の魅力

 「我々は他の国と同じように、ベネズエラ政府と互恵的な関係を発展させている」。ロシアのラブロフ外相は15日、モスクワでの記者会見でベネズエラ支援についてこう語った。支援を続けるかとの質問に「意味が分からない」とけむに巻いたが、額面通りに受け止める向きは少ない。

 ロシア政府は15日、ベネズエラへの融資(約30億ドル)の返済期間を10年間に延長し、当初6年の支払いを最少にする支援策を発表した。13日に米格付け大手のS&Pグローバルと英フィッチ・レーティングスがベネズエラ債券を「部分的な債務不履行」と認定したのを受け、救済に動いた。

 シリアや北朝鮮の問題で米政府を揺さぶるプーチン大統領には、ベネズエラの地政学上の価値が魅力的に映るようだ。

 プーチン氏は返済猶予と引き換えに、ロシア軍艦をベネズエラに停泊させることを要求しているとされる。実現すれば、ロシアは米国の目と鼻の先の南米大陸に軍事拠点を持てる。「ベネズエラは自治権を守るため、ロシアとともに進む」。ベネズエラのマドゥロ大統領は8月、両国の軍事協力を発表。米国に対抗するうえでロシアを戦略的なパートナーとして迎える方針を固めたようだ。

 石油の利権も大きい。ロシア国営石油ロスネフチは、ベネズエラ国営石油会社PDVSAに融資。PDVSAが持つ米製油所に担保を設定したとされる。ロシアはベネズエラの債務問題を通じ、米国の石油産業にも影響力を及ぼせる。プーチン政権で実質ナンバー2とされるロスネフチのセチン社長が、ベネズエラ支援を主導しているとの指摘もある。

 最大の債権国、中国はどうか。中国は過去10年間でベネズエラのインフラ整備などに650億ドルを融資してきた。今もロシアの7倍近い約200億ドルの融資残高を抱えているとされる。近年は返済が滞り、2016年の投資はピーク時の3分の1に減った。石油や鉱山の分野で細々と投融資を続けている。

 「中国は長期展望で投資した。手は引かない」。米インターアメリカン・ダイアログのマーガレット・マイヤーズ氏はこうみる。ベネズエラは中国が精製する重質油を産出する。豊富な資源を見返りに経済支援を期待できる中国は、対米戦略上の切り札になり得る。ただ、中国は16日に「ベネズエラ政府は債務問題を適切に扱う能力があると信じている」(外務省の耿爽副報道局長)としただけで、沈黙を守る。

 ベネズエラは99年に左派政権が誕生し、米国を目の敵としてきた。実は経済面では米国に依存する。資金調達をウォール街に頼り、同国の輸出の95%を占める原油の最大の輸出先は米国だ。米国の金融機関や石油産業抜きに経済は成り立たないのが現実だった。

独裁政権と距離

 ベネズエラの反米政策は歴代の米政権にとって目障りだった。だが、ベネズエラ産原油の輸入はカナダやサウジアラビアに次いで全体の10%弱を占める規模だけに実質的に黙認してきた。

 その米国が敵視政策を始めた。民主的な選挙で選ばれた国会を無効とし、独裁を進めるマドゥロ政権に対し、米財務省は8月に新規の融資や債券発行を禁じる経済制裁に踏み切った。債務再編でも、交渉への参加は米国の経済制裁に抵触すると警告。結局、欧米の機関投資家は大半が参加せず、交渉を破談に追い込んだ。融資や起債で債務を返済する自転車操業に陥ったベネズエラに兵糧攻めを加えた。

 米国の敵視政策でベネズエラは、ロシアや中国への依存を強めざるを得ない。米国はベネズエラを締め付けすぎれば、石油というアキレスけんを中ロに握られかねない。

(サンパウロ=外山尚之)



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