真相深層 中国国有企業、止まらぬ巨大化 習氏主導で合併 相次ぐ 2017/8/25 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「真相深層 中国国有企業、止まらぬ巨大化 習氏主導で合併相次ぐ 」です。





 中国で国有企業の合併が相次いでいる。仕掛ける共産党が掲げるスローガンは「より強く、より優れ、より大きく」。世界で戦える巨大な国有企業をつくる構想は、権力集中を進める習近平総書記(国家主席)の政権戦略と密接に絡む。

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 石炭大手の神華集団と、発電大手の中国国電集団が合併へ――。2日、国有企業の大型再編を伝えるニュースに、業界関係者は色めき立った。

 北京で開かれた公開のフォーラムで、国電幹部が明らかにしたのを受けた報道だった。ところが主催者は翌日、奇妙な対応を取った。「上の指示で、国電の幹部が発言した部分だけ会議録を渡せなくなった」。合併を表明した発言を事実上なかったことにしたのだ。

 関係者は「発言は事実だ」と認めたうえでこう解説した。「国電幹部は党の許可を取らずに話してしまったのだろう」

 中国には国務院(政府)が所管する「中央企業」と呼ばれる大型の国有企業が現在、99社ある。神華と国電はいずれも中央企業だ。当局はいま、猛烈な勢いでその統合を進めている。

 当局の背中を押すのが、共産党中央と国務院の連名で2015年8月にまとめた「国有企業改革の深化に関する指導意見」だ。「世界一流の多国籍企業を育てる」との目標を掲げ「20年までに決定的な成果を上げる」とぶち上げた。「より強く……」のスローガンもこの中に出てくる。

 数値目標は設けなかったが、当時110社あった中央企業を40社程度に集約する案を念頭に置いていた。期限まであと3年。自動車大手の中国第一汽車集団と東風汽車公司などをはじめ、ここにきて多くの統合構想が浮上してきた背景には当局の焦りがのぞく。

 15年の指導意見は、共産党が国有企業改革で前面に出る根拠にもなっている。「習総書記のたび重なる指示を受け、改革の方向性と基本ルールを明記した」。国務院の担当幹部は当時の記者会見で、意見が「習氏の意向」であると強調した。

 習氏の狙いを理解するには、06年末に胡錦濤前政権がまとめた国有企業改革の指導意見を振り返る必要がある。

 中央企業を再編し、グローバルな競争を勝ち抜く巨大な企業集団をつくる発想自体は変わらない。しかし、あくまで主役は国務院で、党は余計な口を挟まないという姿勢をにじませていた点が15年と大きく異なる。

 それが裏目に出た。国有企業は既得権を守るために統合を渋り、再編は遅々として進まなかった。党高官や引退した長老らの利害が複雑にからみ合い、胡指導部はひどくなる一方の汚職に手をつけられなかった。

 12年に最高指導者の地位に就いた習氏は、党が国有企業をコントロールできていない状況に危機感を抱いたはずだ。

 反腐敗闘争を通じて国有企業の幹部を次々に摘発し、党の指示を忠実に守る人物を新たに送り込んだ。経営上の重要な決定にあたって党の意見を事前に聞かなければならないとする規定を定款に書き込ませ、党の意のままに動く企業グループを次々につくり出した。

 1990年代後半に当時の朱鎔基首相が取り組んだ国有企業改革とはだいぶ違う。朱氏は非効率な国有部門を小さくし、民間部門を育てて競争を喚起しようとした。80年代に実現した日本の国鉄や電電公社の分割民営化を研究し、参考にした。

 習氏は逆だ。国有企業を集約してさらに大きくし、国内である程度の独占を認める。中国勢どうしの消耗戦を避け、世界に出ていく発想だ。

 習政権下で合併してできた鉄道車両の中国中車や、海運業の中国遠洋海運の存在感は世界で無視できない。低価格を武器にますますシェアを高め、他国の企業との競争を有利に進めている。

 だが、国や党の思い通りになる巨大な紅(あか)い企業が世界の市場でわがままに振る舞えば、自由で健全な競争をゆがめかねない。必ずしも経済合理性だけで動かないとされる中国企業の巨大化に警戒感が強まる。(中国総局長 高橋哲史)



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