真相深層 中国外相、外交より習近平氏への忠誠 2017/2/25 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「真相深層 中国外相、外交より習近平氏への忠誠」です。





 ティラーソン米国務長官が国際会議にデビューした16、17日の20カ国・地域(G20)外相会合。トランプ政権発足後、初の米中外相会談に注目が集まったが、中国の王毅外相はぎりぎりまで出席を見送る意向だった。なぜか。党の「核心」という別格の指導者の立場を手にした習近平国家主席が、自身への忠誠を繰り返し誓わせる中国特有の論理に縛られていた。

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G20外相会合が開かれたドイツ・ボンで会談したティラーソン米国務長官(左)と中国の王毅外相(17日)=AP

 「2月中旬に予定していた要人の訪日は延期させてほしい」。1月中旬に中国を訪れた日本の与党議員に対し、中国共産党の外交窓口である中央対外連絡部(中連部)の幹部が告げた。自民、公明両党と中国共産党は原則、毎年1回、幹部が相互に訪問しており、今年は2月に日本で会合を開く予定だった。

 日本側が理由をただすと、「共産党の重要会議と重なり、宋濤・中連部長(閣僚級)が対応できない。詳細は言えない」。中国側は極めて丁寧に対応し、日本を敬遠しているわけではないことを繰り返し説明した。

 ちょうど日本の対台湾窓口機関である「交流協会」が1月に「日本台湾交流協会」へ名称変更したことに、中国が強く反発していた時期だ。その影響も懸念されたが、中国側の説明に耳を澄ますと、重要会議があるという説明自体に嘘は感じられない。「どんな会議があるんだ」。情報収集に走ったが、事情はつまびらかにならなかった。

 同じ頃、G20外相会合を主催するドイツにも、王外相が欠席する可能性が高いとの連絡が内々に届いた。中国側は正式決定ではないとしつつ、李保東外務次官に代理出席させる方針を固めていた。ここでも理由は「国内の重要会議」だった。

 G20は中国が米国と肩を並べて存在感を発揮できる重要な舞台だ。トランプ米大統領が中国大陸と台湾が一つの国に属するという「一つの中国」政策の見直しを示唆したことに対し、中国の立場をティラーソン氏に直接伝える機会ともみられていた。なぜ来ないのか。北京の外交関係者はそろって首をかしげた。

 ところが、会合直前に事態が動く。10日(中国時間)にトランプ大統領が習主席との電話協議で「一つの中国」政策を尊重すると伝達。米中間の最大の懸念が解消され、中国政府内で「この機会にトランプ米政権との関係構築を進めるべきだ」との意見が強まった。

 結局、王外相は一転してドイツに飛ぶ。「重要会議」が何かは対外的に伏せられたままだった。

 判明したのは13日夕。習主席を「核心」と位置づけた昨年10月の党重要会議の意義について、閣僚級幹部を集めて学習する会議が開かれた、と国営新華社通信が伝えた。

 16日まで4日間にわたり、党内規律の徹底を幹部が学ぶ、いわば「勉強会」だ。反腐敗運動を通じて政敵を排除し、権力集中を進めてきた習氏が最も重視するテーマだ。

 初日の開会式は李克強首相が司会を務め、最高指導部である7人の政治局常務委員がそろって出席した。習主席は「党幹部が党中央の権威を断固守り、党の団結と集中を守るように導かなければならない」と強調した。

 新華社は習氏の発言を解説する記事で、こう警告した。「高級幹部が堕落する原因のうち、最も重いのは政治を重視しないことだ。ある時期には、党中央の権威を無視する現象が存在し、かなり深刻な事態もあった」

 この文言を読んだ外交官たちはようやく得心した。「この会議に出席しなければ、習氏への忠誠に傷がつきかねない」

 王外相は今秋の党大会で、副首相級の国務委員への昇格が取り沙汰される。中連部の宋部長は外相候補の一人とささやかれる。よほどの理由がなければ、欠席という選択はあり得ない。最高指導部の指示がない限り、G20出席でさえ「よほどの理由」にならないのだ。

 王外相は「2017年の外交は党大会の成功のため全力を尽くす」という。最高指導部が入れ替わる党大会を控え、中国は内政重視に傾き、党内の勉強会を理由に米中外相会談さえ蹴りかねない論理が働く。「今年の中国との日程調整は例年になく難しくなる」。外交筋からはため息が漏れている。(北京=永井央紀)



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