真相深層 中国軍、計算ずくの進入 尖閣接続水域を初めて航行 ロシア「ダシ」に対日圧力 2016/06/15 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合1面にある「真相深層 中国軍、計算ずくの進入 尖閣接続水域を初めて航行 ロシア「ダシ」に対日圧力」です。





 暗闇が広がる真夜中の東シナ海。中国軍の艦船が9日未明、いきなり尖閣諸島周辺の接続水域に入り、かつてないほど尖閣に近づいた。日中は再び緊張している。舞台裏を探ると、中国軍が以前から進入を準備していた痕跡が透ける。

中国海軍のフリゲート艦(2012年に公開)=防衛省統合幕僚監部提供

軍用機も接近

 実は5月、尖閣周辺でもうひとつ、深刻なできごとがあった。複数の関係者によると、中国軍用機が尖閣に向かって南下し、これまでになく近づいたという。政府はこの事件を公表していないが、中国軍の意図に懸念を深めている。

 中国軍艦による接続水域への進入は、そんな最中に起きた。「偶発的とは思えない。中国軍は前から計画し、行動したのだろう」。政府の安保担当者は分析する。

 ことの発端はロシア海軍の動きだった。8日午後9時50分ごろ、東南アジアからの帰途にあったロシア軍の艦船が3隻、南側から尖閣周辺の接続水域に入った。

 続いて、それを追いかけるため、海上自衛隊の艦船も同水域に進んだ。中国軍艦が進入したのはその後、9日午前0時50分ごろだ。

 これだけみると、先に接続水域に入ったのはロシア軍と自衛隊であり、中国軍艦は“受け身的”に反応したようにみえる。だが、水面下の動きをみると、あらかじめ準備された行動だった傍証がうかがえる。そのひとつが、ロシア軍を追うため、自衛隊艦船が尖閣の接続水域を航行したのは、これが初めてではないという事実だ。

 政府関係者によると、尖閣国有化により、日中対立が深まった2012年9月以降も、ロシア軍と自衛隊が同じような航路をとった例は「度々あった」。

 それでも中国軍艦が対抗し、接続水域に進入することは一度もなかった。彼らは尖閣から離れた地点にとどまり、遠巻きに監視していた。

 「中国はいま、強大な米軍の介入を招くような危機は起こしたくない。尖閣への軍事挑発には慎重だ」。海上自衛隊の元幹部はこう語る。

 中国軍の首脳がこうした自制を捨てたとは考えづらい。ただ、現場の行動基準を少し緩め、状況に応じ、尖閣の接続水域に入ることを認めることにした公算が大きい。

危機あおらず

 もっとも、中国としては、米軍に介入の口実を与えたくない事情は変わらない。このため、中国側から軍事挑発したとみられないよう、ロシア海軍と自衛隊が同水域に入るのを待ち、中国軍艦船が追随する形を装ったとみられる。

 問題は、中国の底意がどこにあるのかだ。日本政府関係者らに共通する見立てはこうだ。

 中国は毎月ほぼ3回、日本の海上保安庁にあたる海警局の監視船を、尖閣の領海に送っている。尖閣を揺さぶる次の策として、危機をあおらない範囲で軍事圧力をじわりと強めていく狙いだ。

 接続水域は領海の外側12カイリ(約22キロ)~24カイリ(約44キロ)に設けられた「バッファーゾーン」であり、国際法上、外国船も自由に航行できる。とはいえ、尖閣の領有権を主張する中国の軍艦船が頻繁に出入りすれば、日本の実効支配は形がい化しかねない。

 中国軍は布石として12年秋以降、尖閣の北方の洋上に軍艦船1~2隻を常駐させるようになった。当初、尖閣との距離は100~120キロだったが、14年11月下旬ごろからはひそかに、最短で70キロぐらいまで接近させるようになった。

 紛争にならないよう、海警局の監視船を前面に立てながら、軍艦や軍用機も少しずつ、尖閣に近づけようとする中国。ロシア海軍は今回、そんな対日戦術の“ダシ”に使われた格好だ。

 「誤解があるのでコメントします」。在京のロシア大使館は9日午前、ツイッター上で、ロシア軍艦の行動は中国と無関係であり、日本の領海に入る意図はないと強調した。このコメントは数時間後に削除されたが、「ロシア側の中国への不快感の表れといえる」(日ロ関係筋)。

 尖閣を巡る東シナ海情勢は日中に、米ロも巻き込んだせめぎ合いになってきた。

(編集委員 秋田浩之)



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