真相深層 中東和平、米政権内に壁トランプ氏、「2国家共存」揺 さぶる親イスラエルの側近が火種に 2017/4/5 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「真相深層 中東和平、米政権内に壁トランプ氏、「2国家共存」揺さぶる親イスラエルの側近が火種に」です。





 中東和平交渉の前提だったイスラエル、パレスチナ「2国家共存」構想が揺れている。トランプ米大統領がイスラエルのネタニヤフ首相と会い、これに固執しないと発言したためだ。当惑したパレスチナ自治政府やアラブ諸国は構想への明確な支持を求める。水面下を探ると、イスラエル寄りの大統領側近と、アラブ関係国の激しいつばぜり合いが浮かび上がる。

ホワイトハウスでの会談後、記者会見に臨むトランプ大統領(右)とネタニヤフ首相=AP

 パレスチナ人が将来自分たちの国を持ち、隣り合うイスラエルと共存する。これが長年の対立の末、中東和平へ向け導き出された「2国家共存」構想だ。だがトランプ氏は2月15日のネタニヤフ氏との首脳会談後「2国家でも1国家でも、双方が望む方でいい」と発言した。1国家ではイスラエルだけという意味になり、パレスチナの独立国家樹立を認めないのでは、との臆測を呼んだ。

 米政府がイスラエル、自治政府と首脳レベルで2国家共存を確認したのは2003年。その基礎となるパレスチナ暫定自治宣言から数えると、米国3政権が23年に及び追求してきた構想の転換を示唆したことになる。

ヨルダンが仲介

 駆け引きはトランプ氏当選直後から始まった。イスラエル寄りの政策を懸念したパレスチナ自治政府側は対話ルートを築こうと動く。そこに立ちはだかったのが、トランプ氏の娘イバンカさんの夫で大統領上級顧問となったクシュナー氏だ。

 同氏は信仰の厚い正統派ユダヤ教徒でイスラエルをよく訪問。家族は紛争の舞台、ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地に寄付をしたこともある。ネタニヤフ氏とは父が懇意だった関係で、同氏が訪米中クシュナー家に泊まり、寝食をともにした逸話もあるほどの仲だ。自治政府関係者には「クシュナー氏が壁となり、新政権側に近づけない」との見方が浮上した。

 途方に暮れたアッバス自治政府議長は、隣国ヨルダンのアブドラ国王が2月上旬に訪米する情報を入手。首都アンマンを訪ね、2国家共存やユダヤ人入植問題を巡るメッセージを国王に託した。

 国王はワシントンでトランプ氏や主要閣僚に拙速な言動を控えるよう力説。その効果か、トランプ氏は15日のネタニヤフ氏との会談でユダヤ人の入植について「少し自制しては」と要請した。

 パレスチナ関係者によると「米イスラエル首脳会談の数時間前、米中央情報局(CIA)長官が(パレスチナ人が多く住む)西岸に入り、アッバス議長と会談しバランスを取る努力もした」。アラブ諸国が憂慮する在イスラエル米大使館のエルサレム移転問題で、ホワイトハウスが「慎重に進める」と従来より軟化したのも国王の働きかけを尊重したとの説がある。

 ヨルダンは「イスラエルと国交があり、確実に意思疎通できるアラブ国家」(米政府関係者)。米政権も助言を軽視できないと判断したようだ。

不信は拭えず

 その後、2国家共存を巡ってはサウジアラビアやエジプトなど他のアラブ諸国から再考を促すシグナルが続いたため、トランプ氏は通信社の取材に2国家共存が「好ましい」と述べた。だが明確な支持ではなく、各国の不信は消えない。クシュナー氏が言質を取られないよう裏で糸を引いているとの指摘もある。

 トランプ氏は3月10日にようやくアッバス議長と電話会談。「究極の和平合意をまとめる」と意気込み、議長に訪米も招請した。だが2国家を含め具体的な方策については言及を避けた。アラブ各国首脳は3月末、2国家共存で和平を進める路線で一致。アブドラ国王は5日の米との首脳会談で真意をただす。

 14年に中断されたイスラエル・パレスチナ和平交渉はネタニヤフ内閣にタカ派政党が多く、早期再開は厳しい。時に批判を浴びつつも、政治・経済面で米国が果たしてきた役割に期待が集まっていたことも事実だ。

 イランの脅威への対応や過激派組織「イスラム国」(IS)問題でイスラエルやアラブ諸国と連携を優先する姿勢をみせるトランプ政権。取り残された意識を抱くパレスチナ側が「トランプ氏はイスラエルびいき」との印象を強めれば中東に新たな混乱を呼ぶ危うさも漂う。

(編集委員 中西俊裕)



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