真相深層 中韓再接近の裏に韓国「3不」原則 日米とズレ も 2017/11/11 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「真相深層 中韓再接近の裏に韓国「3不」原則 日米とズレも 」です。





 米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の韓国配備で関係が冷え込んでいた中韓両国による電撃合意は、北朝鮮の核・ミサイル問題で世界中の耳目が集まるトランプ米大統領のアジア歴訪直前のタイミングに合わせられた。中韓再接近の動きは、日米韓VS中国を軸とする東アジアのパワーバランスに変化を及ぼしかねない。

米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の韓国配備は中韓関係を冷え込ませた=AP

 「仕掛けがあるはずだ」。10月31日、関係修復をうたった中韓の合意文を読んだ外交専門家はすぐにいぶかしんだ。「THAADは中国の安全保障を損ねない」などと盛られた内容は韓国の従来の主張にすぎない。「16カ月ぶりのトンネルからの脱出」(中央日報)にしてはあっさりしており、中国政府の突然の軟化への疑念は消えない。

 読み解くカギは前日の韓国国会の答弁にある。政府の安全保障政策をただす与党議員の質問に、康京和(カン・ギョンファ)外相は3つの原則を挙げた。▼THAADの追加配備をしない▼米国のミサイル防衛(MD)システムに参加しない▼日米韓安保協力は軍事同盟に発展しない――。「3不」原則と呼ばれる。

 3カ月に及ぶ韓国大統領府と中国外務省の折衝は文書でなく韓国外相が公開の場で口頭で説明する形で折り合った。国会で質問した与党議員は親中派で知られ、この直前に中国を訪れていた。

 10日に政権発足から半年を迎えた文在寅(ムン・ジェイン)大統領には中国との合意を急ぐ必要があった。最大の理由は、残り100日を切った平昌冬季五輪の開幕式に習近平(シー・ジンピン)国家主席を出席させること。それをテコに北朝鮮の五輪参加を引きだし「平和オリンピック」を演出する狙いがある。

 「3不」原則を受け、中国はアジア太平洋経済協力会議(APEC)での中韓首脳会談の開催に応じ、文氏による年内訪中の調整にも入った。韓国を取り込み、「日米韓」連携の結束を弱められれば外交・安全保障のメリットは小さくない。

 文氏は早速、3日のシンガポールメディアとのインタビューで中国の重要性を力説した。「米国との関係を重視しながらも中国との関係もさらに深めるバランスの取れた外交をしていく」。北朝鮮問題の平和的解決を訴える中国と足並みをそろえるとともに、安倍晋三首相が掲げる外交戦略「自由で開かれたインド太平洋戦略」にも慎重な姿勢を明らかにした。

 中韓の合意文はTHAADをめぐる中国の報復や韓国の被害には一切触れていない。韓国の保守系からは「屈辱外交」(野党第1党の自由韓国党)、「中国が示した関係改善の『踏み絵』を踏んだ康外相」(朝鮮日報)との批判が強まっている。

 日米韓の安保協力にも不穏な影を落とす。軍事専門家の間では「日米韓の軍事同盟はない」との韓国の発言を、中国が「軍事協力はない」と受けとめ、日米韓にくさびを打つと懸念する声が漏れる。米韓は中韓合意の3日前である10月28日の安保協議で「アジア太平洋地域の平和と安定に寄与するため日米韓の安保協力を強化する」と約束したばかりだった。今後、中国に配慮する韓国と、北朝鮮への強硬姿勢に傾く日米との間でズレが拡大する恐れは否めない。

 文氏は北朝鮮問題での日米韓協力が重要だとしつつ「日本が北朝鮮の核問題を理由に軍事大国化の道を歩もうとするならば望ましくない」と日本へのけん制を強める。中国との関係改善が進めば「韓国にとって対日外交の優先順位が低まり、歴史問題で日本と和解する機運が弱まる」と日韓外交の専門家は分析した。

 朝鮮半島情勢が緊張するなかでの「3不」原則の表明は、トランプ米政権を刺激しかねない。「韓国がその3つの領域で主権を放棄するとは考えていない。外相の発言は確定的なものではないと思う」。マクマスター米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は韓国メディアなどとのインタビューで「3不」原則への見解を聞かれ、こう語った。米国が同盟国などと築く東アジアの安保秩序に中国の干渉を許すことへの危機感がにじむ。

(ソウル支局長 峯岸博)



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