真相深層 反政権とつながる少女像韓国、勢い増す革新系 大統領選にらみ混迷 2017/1/19 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「真相深層 反政権とつながる少女像韓国、勢い増す革新系 大統領選にらみ混迷」です。





 韓国・釜山の日本総領事館前に従軍慰安婦を象徴する少女像が新たに設置され、改善に向かっていた日韓関係に冷水を浴びせた。ソウルでは朴槿恵(パク・クネ)大統領の即時退陣を求める集会が12週連続で開かれた。労働組合や市民団体が「反日」「市民革命」の旗を振る2つの運動は底流で深く結びついている。

釜山の日本総領事館前に設置された少女像に黙とうする女性たち=聯合・共同

ソフト路線前面

 「朴槿恵を逮捕しろ!」「憲法裁判所も弾劾を決めろ!」。ソウル中心部の光化門広場は氷点下まで冷え込んだ14日夜もろうそくの火が揺れた。「反朴」のバロメーターとして主催者が発表する集会の参加者数はときに警察推計の10倍超の数字に上ることもある。それでも野党や韓国メディアは、主催者発表の最大値だった170万人(昨年12月3日、警察推計は32万人)を引用し「100万人ろうそくの民心」などと朴氏を突きあげる。

 「主催者」とは、約1500団体でつくる「朴槿恵政権退陣非常国民行動」。全国民主労働組合総連盟など反政権の労組や市民団体が中心メンバーだ。政治理念による保革対立が日本よりはっきりしているこの国でかねて解雇要件の緩和などの労働改革や歴史教科書の国定化、対北朝鮮強硬政策にことごとく反発。「不法暴力デモ」と厳しい姿勢で臨んだ保守系の朴政権とぶつかり合った。

 そこに朴大統領の40年来の友人、崔順実(チェ・スンシル)被告の国政介入疑惑が降ってわいた。組織率低下で影響力が衰える革新系の労組にとって、「保守」を象徴する故朴正熙(パク・チョンヒ)元大統領と朴槿恵氏の父娘2代への恨みを晴らす絶好の機会だ。

 先頭に立つ「朴槿恵政権退陣非常国民行動」は昨年11月の発足式で、労働改革の阻止とともに、地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の在韓米軍導入、従軍慰安婦問題の日韓合意、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を「粉砕しよう」と訴えた。

 「市民集会」では会場に設営する大画面の舞台装置から参加者が手にするろうそく、抗議のプラカードまで反政権団体が用意する。一部のデモ隊が鉄パイプを振り回し、警察車両を壊して機動隊から放水銃や催涙スプレーで応酬される従来のような光景はなく、ソフト路線を演出している。

 与党セヌリ党やサムスンなど財閥を糾弾する掛け声も聞かれる。市民や学生に鬱積する「格差」への不満もくみ取り、倒閣運動の大衆化に成功した。韓国メディアや野党は集会を「驚くほど平和的で韓国の民主主義の水準を世界中に知らしめた」と称賛する。反政権団体の最終目標が政権交代による「革命」である以上、ソウル中心部のともしびは大統領選が終わるまで消えないのだろう。

異変の兆し

 5年に1度の韓国大統領選は保守系と革新系の候補がきまって激戦を繰り広げる。その構図にも異変の兆しがでている。昨年12月28、29両日に韓国紙・中央日報が実施した世論調査によると、進歩(革新)系の大統領を好むとの回答が63%を占め、昨年9月調査時の37%から跳ねあがった。

 政党別支持率では革新系の最大野党「共に民主党」が41%と金大中政権以来の高支持率を記録(13日発表の韓国ギャラップの世論調査)。次期大統領選出馬が有力視される人物のうち文在寅(ムン・ジェイン)同党前代表の支持率が31%に上昇し、潘基文(バン・キムン)前国連事務総長(同20%)らを引き離す。

 朴大統領弾劾推進派からは今春の大統領選説がささやかれる。共に民主党の禹相虎(ウ・サンホ)院内代表は「保守は権力の前で復元力をみせる。権力をつかむ技術はわれわれより秀でている」と革新系の慢心を戒める。それでも大統領スキャンダルで次期大統領選の「革新系優位」が鮮明になったのは間違いない。

 「少女像は国民のろうそくがつくり上げた新しい国のシンボル」。釜山に少女像を設置した市民団体のフェイスブックに集会と少女像を結びつけた文字が躍る。撤去・移転のハードルを高める動きに対し、現体制は世論と「ポスト朴」を恐れて萎縮する。朝鮮半島の南側で「もうひとつの分断国家」があぶりだされ、日本を直撃している。

(ソウル支局長 峯岸博)



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