真相深層 国税、富裕層に厳しい目 税逃れ対策全国にPT 2017/12/1 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「真相深層 国税、富裕層に厳しい目 税逃れ対策全国にPT」です。





 国税当局が国内外に多額の資産を持つ富裕層の税逃れを監視する体制を強化している。今夏から富裕層調査を担うプロジェクトチーム(富裕層PT)を全国に配置し、人員も約4倍に増やした。タックスヘイブン(租税回避地)の利用実態を暴いたパナマ文書などを機に国民の関心が高まるなか、資産隠しや国際的な租税回避への対応力を高める狙いという。

 富裕層PTは2014年、東京、大阪、名古屋の3国税局に設置された。ノウハウを蓄積し17年夏から全国12の国税局・事務所に拡大。メンバーは約200人で、国税庁内に司令塔役として「国際課税企画官」のポストも新設された。

 国税当局は近年、富裕層への課税体制を強化。16事務年度(16年7月~17年6月)の富裕層への調査は4188件あり、約441億円の申告漏れが見つかった。国の借金が1千兆円を超え「取れるところから取る」という姿勢がうかがえる。

 国税当局の富裕層の基準とは。関係者によると、数年前の基準は「経常所得の合計金額1億円以上」「相続(遺贈)財産5億円以上」など。人数の統計はないが、15年の国税庁の申告所得税標本調査によると、所得1億円超は約1万7千人で、高額財産を相続した人らを含めれば「2万人超はいる」(国税OB)。

 国税庁は富裕層PTが手掛けた案件を明らかにしていないが、内部資料から一端が判明した。同庁には全国の国税局・事務所が手掛けた課税処分などから「複雑困難な事案や創意工夫した事案」を選んで長官が表彰する制度がある。

 日本経済新聞は情報公開請求で16年度の表彰関係資料を入手。黒塗り部分が多く処分対象者などは不明だが、大阪国税局の表彰事案には「富裕層による租税回避に厳しい目が向けられる中、厳正な課税処理を行った」との記載があった。

 関係者によると、この事案は電子機器会社の創業者親族による贈与税約1500億円の申告漏れ。創業者らは、電子機器会社の筆頭株主である資産管理会社(非上場)の新株予約権付社債(転換社債)などを利用した出資で、資産管理会社を傘下に持つ新会社(非上場)を設立し、新会社株を親族に贈与した。

 当局は非上場の新会社株の評価が実態とかけ離れていると判断し、約300億円を追徴した。転換社債を使って相続税や贈与税を減らす節税策は「抜け穴」とされていたが、今後は封じられる見通しになった。

 国際的な租税回避への対応では、東京国税局の表彰事案に「意図的な国際的租税回避を把握」との記載があった。事案は海運業者への課税処分。当局は租税回避地のパナマで実質的な子会社として管理する関係会社の所得を意図的に申告しなかったと判断し、約3億円を追徴した。

 国際化、複雑化する富裕層の資産を捕捉するため、国税当局は18年9月までに各国の税務当局間で「CRS(Common Reporting Standard=共通報告基準)」を始める。CRSは各国の税務当局が金融機関から名前や住所、口座残高、利子・配当の年間受取額などの報告を受け、自動的に交換する仕組みだ。

 こうした国税当局の課税体制強化に対し、節税目的で海外に資産を移して移住する富裕層も目立つ。「数十億円規模の資産家から海外移住を希望する相談が毎月2件ほどある」(国際税務に詳しい弁護士)

 例えば、シンガポールは相続税や贈与税がかからず、投資でもうけた分は非課税で法人税率も20%未満。外務省の統計によると、日本人の長期滞在者は16年10月時点で約3万5千人と4年前と比べ約3割増えており、節税目的の富裕層も含まれているとみられる。

 国税当局の幹部は「富裕層は日本経済をけん引する人材も多く、狙い撃ちにしているつもりはないが、富裕層だけができる手法で税を回避するのは不公平だ」と強調する。一方、富裕層を顧客に持つプライベートバンカーは「稼いでも結局は徴税されるだけという意識になれば、結果的にイノベーションを阻害し経済の活力をそぐのでは」と話す。当局と富裕層のつばぜり合いは続く。(川瀬智浄)



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