真相深層 成否占う「石油」カード北朝鮮制裁、輸出3割減で決着 2017/9/20 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の企業面にある「成否占う「石油」カード北朝鮮制裁、輸出3割減で決着」です。





 大陸間弾道ミサイル(ICBM)搭載用の水爆実験を強行した北朝鮮を追い詰めようと、国連安全保障理事会の追加制裁決議で焦点になったのが「石油」だ。決議は北朝鮮への原油・石油精製品の輸出3割削減を見込み、北朝鮮も「完全に窒息させる狙い」と焦りをにじませる。核・ミサイルの暴走を止められるか。

8月15日、北朝鮮の労働新聞が掲載した、朝鮮人民軍戦略軍司令部を視察する金正恩委員長(中央)の写真=コリアメディア提供・共同

6カ国協議誕生

 今と似たような光景が14年前にもあった。2003年1月、北朝鮮は核拡散防止条約(NPT)からの脱退を表明。翌月には日本海に地対艦ミサイルを発射し、核施設の再稼働にも踏みきった。第2次核危機がささやかれ、米国内で「日本の核武装論」が浮上した。

 まさにそのタイミングだった。中国は「技術上のトラブル」を名目に北朝鮮向けの石油供給を3日間にわたり停止した。その2カ月後、北朝鮮は北京での米朝中会談に応じた。8月の日韓ロを交えた6カ国協議誕生につながる。石油停止の裏で銭其シン・元中国副首相が平壌を訪れ、対話を受け入れるよう促していた。この経緯を同年9月の米議会で明かしたケリー米国務次官補(当時)は中国の圧力が北朝鮮を動かしたとの認識を示した。

 「我々が信じるのは自分の力だけだ」。金正恩(キム・ジョンウン)委員長が唱える「自強力第一主義」は自国内の資源や技術、労働力を使って生産し、自国内で消費する理念。国産ゼロの石油の輸入比率を下げ、自前で調達できる石炭を最大限使う産業システムを作りあげている。エネルギー総消費量のうち石油は約5%。韓国の消費量の0.7%にすぎない。

 だが石油を禁輸されれば輸送や軍の活動を中心に打撃は計り知れない。韓国政府系のエネルギー経済研究院によると、北朝鮮は14年に公式ルートで年53万トンの原油と20万トンの石油精製品を輸入。国内で生産した約48万トンの石油精製品のうち21万トンを発電用に、残る27万トンは最終消費に供給した。軍用機や戦車、軍隊の移動にも石油は欠かせず、軍に優先的に回せば住民の生活は大きく制約される。「全面禁輸なら3カ月ともたない」と北朝鮮専門家はみる。

 北朝鮮は平時に1年分、戦時なら1カ月分の石油を備蓄しているとの分析が米国内にある。だが韓国の専門家は「国家レベルの戦略物資備蓄システムはない」と断じる。軍部隊や機関、企業に配給物資の10~30%を戦時用に備蓄するよう強制しても、大半が闇市場に横流しされているという。

 7月に北朝鮮の平壌を訪れた人物によると、自動車のナンバーによる走行規制が実施されていた。ガソリン消費量を抑制し、減らした分は備蓄に回すとの説明を受けた。北朝鮮専門ネットメディアのデイリーNKは、今月に入って平壌を中心にガソリン価格が高騰を始めたとの消息筋の話を伝えた。一方、米政府系放送局のアメリカの声(VOA)は19日、平壌駐在の外交官からのメールの内容を紹介し、平壌のガソリン価格や為替レートが3日の核実験前と変動がないと報じた。

中国依存下がる

 中国の石油一時停止を契機とした6カ国協議は05年に北朝鮮が核放棄を約束した共同声明をまとめた。ただ当時とは状況が異なる。共同声明の翌年に北朝鮮は初の核実験を実施し、今や米本土に届くICBMが完成に近づく。中朝関係筋によると4年ほど前にロシアから北朝鮮へ石油を輸送する鉄道が敷かれた。北朝鮮の石油精製施設に直結する線路もあり、輸送可能量が格段に増えたという。中国への依存度は00年代と比べ下がった。

 北朝鮮エネルギー専門家は「北朝鮮は国境地帯や海上で密輸する量が多い」と明かす。韓国の汝矣島研究院も「ロシアの密輸業者が北朝鮮に石油と必需品をひそかに供給し、中国の穴を埋めている」と指摘する。

 安保理決議は今まで触れられなかった石油供給に踏みこんだ。正恩体制を支える北朝鮮経済にメスを入れる一定の効果は期待できる。その圧力を高めるカギは、中国、ロシア両政府による通常の貿易への監視に加え、密輸などの不法取引まで取り締まる点にある。

(ソウル=峯岸博、北京=永井央紀)



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