真相深層 投信の7割、市場平均に負ける 緩和マネーが経験則覆す 食品・銀行株…新たな連動 2015/07/04 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合1面にある「真相深層 投信の7割、市場平均に負ける 緩和マネーが経験則覆す 食品・銀行株…新たな連動」です。





 市場の「常識」が崩れつつある。日経平均株価は2万円台に駆け上がったのに、投資のプロであるファンドマネジャーは運用成績を伸ばせていない。7割の投資信託で運用成績が市場平均を下回るという異常事態だ。金利と食品、原油と銀行、そして為替と商品。グローバルに行き交う投資マネーは経験則にはなかった新たな関係を生み、投資家を翻弄している。

「割高」でも上昇

 「何を買えばよいのかさっぱり分からない」――。ある国内投信のファンドマネジャーはあきらめ顔だ。彼は企業業績と株価の水準を綿密に分析して銘柄を選ぶ。いわば投資の王道だが、今の市場は、この手法が通用しにくい。株価が割高とみて買わなかった銘柄が、あれよあれよという間に上昇していく。

 日興リサーチセンターによると、昨年末までに設定された日本株を投資対象とする公募投信580本(指数連動型除く)のうち、今年の運用成績が東証株価指数(TOPIX)の値動きを上回るのは170本強にすぎない。実に7割の投信が市場平均に勝てない「負け組」になっている。

 投資家を困惑させた代表格がカルビーやヤクルト本社といった食品株の値動きだ。年初から4月中旬までで4割も上昇しており、1割強の上昇だった日経平均をはるかに上回った。業績と株価水準を比較しても、食品株が上がる理由が分からない。証券アナリストらがこぞって背景を探り、たどり着いた原因が海外の金利の低下だった。

 食品株が上昇した起点は1月だ。欧州中央銀行(ECB)が量的金融緩和の導入を決めた時期に重なる。欧州ではマイナス金利が広がり、債券の投資家は利回りを得られなくなった。そこで目を付けたのが日本の食品株だ。業績が安定して配当を期待でき株価の変動幅も小さい。「国債と株式の利回りを比較して買う株の投資家にはなかった買い方」(野村証券の村上昭博氏)といえる。

 4月に入ると新たな連動が起きる。次の主役はメガバンクなど銀行株だ。融資が伸び悩む銀行株を、国内の投資家は必要以上には保有していなかった。それが突如として上昇し始めた。慌てた投資家が追随して銀行株を買い、上昇に拍車をかけることになった。

 原因を探ると、またもや株式市場の外側にあった。この時期、商品市場では原油価格が反転し、上昇していた。原油高は物価を押し上げる。物価が上がれば金利が上昇し、銀行の利ざやも大きくなる。この連想が働き、日本だけでなく世界で銀行株が上昇した。

 市場を越えた新たな連動が生まれた背景には、投資マネーのグローバル化がある。世界の中央銀行が膨大な緩和マネーを供給し続けた結果、マネーはますます国境や資産の種類に関係なく行き交うようになった。

 主軸通貨であるドル相場と原油市場では「ドル高=原油安」の関係性が一段と強くなっている。

 原油市場では年金基金などの長期投資家に代わって、相場の流れに追随して利益を確保するCTA(商品投資顧問)や、短期売買を繰り返す超高頻度取引(HFT)業者が存在感を高めている。為替市場と商品市場の関係性が強くなったのは、こうしたヘッジファンドの台頭が原因だ。

 「多くのヘッジファンドは為替相場が動くと自動的に原油を売買するプログラムを組み込んでいる」とマーケット・リスク・アドバイザリーの新村直弘代表取締役は話す。為替相場でドルが買われれば機械的に原油が売られる。ドルの実質実効為替レートと原油価格の相関係数は今年に入り「マイナス1」に迫っている。これは正反対の値動きであることを示す。

連鎖のリスクも

 投資環境がグローバル化し、今では個人投資家でも世界中の資産に投資できる。その利便性は大きいが、金利や原油価格などの変動に株式相場が大きく左右されるようになれば、株価が企業業績などの実態とかけ離れたものになる。

 市場からも「投資家のチキンレース(度胸試し)が極まりかねない」(JPモルガン・アセット・マネジメントの重見吉徳氏)と危惧する声が増えてきた。米国の利上げやギリシャ問題など市場の懸念材料は目白押しだ。緩和マネーが生んだ新たな連動は、万が一のショックが連鎖し大きくなるリスクもはらむ。(酒井隆介、金子夏樹)



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