真相深層 投信コスト二極化 「超格安」の指数連動型、20~40代つかむ 高齢層、高くても積極運用型 2015/10/24 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合1面にある「真相深層 投信コスト二極化 「超格安」の指数連動型、20~40代つかむ 高齢層、高くても積極運用型」です。





 20~40歳代の資産形成層に向けて超低コストの投資信託の投入が相次いでいる。一方で圧倒的な資金量を持つ高齢層には複雑で高コストの投信が売れ続け、投信販売は二極化している。

 「まだ公表されていないが、ニッセイアセットマネジメントから、11月にネット販売向け投信のコストを大きく引き下げると連絡を受けた。投信は“コスト革命”といえる時代に突入した」。複数のネット証券会社幹部が口をそろえる。

 戦いの契機は9月。三井住友アセットマネジメントが、これまで確定拠出年金(DC)向けだった超低コスト投信を、ネット証券向けに一般販売を始めたことだった。

信託報酬抑える

 投信は購入時に販売手数料がかかることがあるほか、持っている間、信託報酬(信報)というコストが毎日引かれる。長期の保有で特に影響が大きいのは信報だ。

 三井住友の投信の信報は国内債券が年0.1%台、全海外株式が0.2%台。ともに指数に連動する低コストの「インデックス型」と呼ばれる投信だが、従来の同種の投信に比べても半分未満の超低コストだ。

 インターネットは若い世代の書き込みですぐに「祭り」状態になった。「グッジョブ!」「最終兵器だ」。三井住友の横山邦男社長は「予想外の反響の大きさに驚いた。低コストで長期で資産形成したい若年層への手ごたえを感じた」と話す。

 数年前から「購入・換金手数料なしシリーズ」で低コスト投信を広げてきたのがニッセイ。「若い世代は、ネットを駆使してコストを比較して買う。やがて資産運用の中心的な層に育つ彼らに、いち早く使ってもらいたい」(上原秀信取締役)という狙いだった。

 しかし9月の三井住友の投信はニッセイの同種の信報を下回った。「ニッセイは11月に同シリーズの投信の信報を三井住友よりさらに下げるようだ」(ネット証券幹部)。「超低コストはニッセイ」というブランドを、死守する試みだ。

 一方、運用担当者の腕で市場平均を上回る成績を目指す「アクティブ型」を含めた日本の投信全体では、まったく逆の動きが進行してきた。

 1990年代前半は加重平均で年0.9%台前後だった信報は長期にわたり上昇。今も高止まりしている。現在の主力の投資家層である60歳以上の高齢層への売れ筋商品が、高コストだからだ。

 「分配金を重視する投資家向けに、海外低格付け債券などに新興国通貨を組み合わせるなど複雑化した高コストのアクティブ型投信が増えた」(楽天証券経済研究所の篠田尚子氏)。背景には対面型の販売金融機関からの要請がある。

 投信では長期になるほどコスト差が成績を左右する。10年超ではアクティブ型の6~7割の成績が、コスト負担の重さなどで市場平均を下回りがちなのは内外共通だ。「いいアクティブ型投信もあるが、本来なら資金の中心部分はインデックス型を使うのがセオリー」とモーニングスターの朝倉智也社長は言う。

 米国では投信の加重平均の保有コストは日本のほぼ半分。販売形態の違いがあり一律比較は困難だが、10年前より2割も低下した。インデックス型への資金シフトが進んでいるのも一因だ。

国が業者に警鐘

 米モーニングスターが2年に1度まとめる「世界投信市場」。「規制や税金」「費用」などの4項目で評価する。15年調査で日本は3回連続で順位を落とし、25か国中で中国に続いて下から2番目の水準。費用の高さなどが低評価の一因だ。

 金融庁は7月の「金融モニタリングリポート」で「運用業者が販売会社のニーズを重視するあまり、顧客のニーズをおろそかにすれば、貯蓄から投資の流れも進まなくなる」と厳しく指摘した。

 逆にこうした状況は成長余地の大きさも示す。「いい商品を提供して巨額の預貯金を揺り動かせば、我々運用会社は大きく生まれ変われる」(三井住友の横山社長)。この夏、急成長中の独立系のセゾン投信も既存の投信の信託報酬を一部実質的に引き下げた。

 ニッセイや三井住友の投信は米国の低コスト投信にひけをとらない。投資家が自分の選択次第で、低コストでの長期資産形成ができる時代がようやく始まった。

(編集委員 田村正之)



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