真相深層 日本の防衛費、米がさらう 装備調達で不利な契 約 米からの技術移転も少なく 2018/1/18 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「真相深層 日本の防衛費、米がさらう 装備調達で不利な契約 米からの技術移転も少なく」です。





 挑発を繰り返す北朝鮮への対応から、政府は2018年度予算案で過去最高の防衛費を盛り込んだ。米国から「イージス・アショア」など最新鋭装備を受けて有事への対応を急ぐ安倍政権だが、国内の防衛産業関係者の表情はさえない。米国との不利な契約形態が定着、収益に加え、国防上の技術蓄積の点でも問題をはらんでいるからだ。

航空自衛隊が導入するF35戦闘機(空自提供)

 「トランプ大統領はさすがビジネスマンだ」。日本の防衛産業に携わる大手重工メーカー関係者は自嘲気味にこう話す。昨年11月の日米首脳会談。来日した米トランプ大統領から防衛装備品の大量購入を迫られた安倍首相は「最大限努力する」と二つ返事で応えた。「これでまた国の防衛予算は米国に吸い取られる」(重工メーカー関係者)とため息が漏れる。

 北朝鮮情勢の緊迫に加え、「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプ大統領の就任もあり、日米の防衛装備品を巡る調達方法は変わってきた。

 これまで米国製の防衛装備品を調達する場合、ライセンスを受けて生産することが多かった。日本企業はライセンス料を支払うものの組み立てなどを担えるほか、日本製部品の採用やコスト管理もしやすいため、国内防衛産業の生産・技術基盤の強化にも貢献する「互恵的」な取引だった。

 しかし、最近では対外有償軍事援助(FMS)と呼ばれる取引契約が急増している。FMSは重要な機密を含む装備品を扱う場合、米政府が窓口となって契約を進める政府間取引だ。米国外への技術流出への懸念や自国の防衛産業の保護から米政府はFMS契約を積極的に採用。11年度に431億円だったFMSの調達額は16年度は4858億円と跳ね上がった。

 FMS契約では価格は米国政府が決め、代金は日本政府が前払いする。装備品を提供する時期は決めず、契約内容が変わる場合もあるなど、米国側が取引の主導権を握る。ライセンス供与も原則認められない。

 FMSでの装備品調達には政府内でも問題点が指摘されている。

 会計検査院は昨年9月、最新鋭のステルス戦闘機「F35A」に採用予定だった日本製部品が搭載されていないと防衛装備庁に指摘した。日本メーカーへの米社製素材の提供が遅れたためだ。FMSは日本にとって最新鋭の装備品を入手できるメリットがあるが、前払いで日本から米国に払いすぎた費用が精算されない問題も起きている。これまでも会計検査院は米国側と交渉して改善するように求めてきた。

 日本の防衛産業の市場規模は現在1.8兆円あるが、FMSによる米国からの装備品調達の増加で輸入の割合が高まる一方、国内防衛産業のシェアは縮小している。

 FMSは今後も増える公算が大きい。日本が19年度以降に2基導入する「イージス・アショア」は1基あたり約1千億円。高性能レーダーを搭載すればさらに金額が膨らむ。トランプ大統領が日本に米国製装備品の購入を増やすよう迫ったのも、FMSの増額につながりそうだ。

 朝鮮半島の緊張が高まるなか、「FMSを通じて高性能の米国製装備品の導入は日本の防衛力強化のために重要だ」。小野寺五典防衛相はFMSの急増はやむを得ないとの考えを示す。

 国内防衛産業の最大手である三菱重工業でも同部門の売上高は年間4000億円程度。防衛分野の売上比率は川崎重工業など大手でも1ケタにすぎないが、安定的に稼げる防衛部門は造船やプラント建設で苦戦している重工各社の業績を下支えする貴重な存在だ。

 米国政府の言い値が通りやすいFMSが増えれば、コスト管理ができないばかりか、最新技術の蓄積も滞る懸念がある。日本メーカーに独自技術がなければ、米国以外の国との防衛装備の共同開発にも支障が出てくる。

 小野寺防衛相は「FMS調達の増加が国内防衛産業の生産・技術基盤に影響を与えないよう十分な対策をとることが必要だ」とも話すが、防衛装備庁幹部は「限られた防衛費では中長期の研究開発が後回しにされがち」と指摘する。北朝鮮の脅威が増すなか、米国依存を強める日本の国防のあり方が問われている。(市原朋大、田島如生)



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