真相深層 日本改革遅れ いらだつ米 G20で円売り介入にクギ 安倍政権に政策転換促す 2016/04/20 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合1面にある「真相深層 日本改革遅れ いらだつ米 G20で円売り介入にクギ 安倍政権に政策転換促す」です。





 14~15日に米ワシントンで開いた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、日米の円相場を巡る温度差が鮮明になった。ルー米財務長官は「円高とはいえ相場は秩序的だ」と言明し、日本が探った円売り介入に拒否反応を示した。3年にわたる円安路線を黙認してきた米当局の姿勢の変化には、遅れている日本の構造改革へのいらだちがある。

麻生財務相=ロイター

ルー米財務長官=ロイター

際だった冷淡さ

 「最近の円相場の偏った動きを懸念している」。麻生太郎財務相は14日の日米財務相会談でルー氏にこう迫った。年明けからの円の上昇幅は、対ドルで約12円に達し、景気と株価の下押し要因になっていた。日本側が模索したのは、円高がもう一段進んだ場合に円売り介入に踏み切れるよう、暗黙の了解を取り付けることだった。

 しかし翌15日、ルー氏は記者会見で「円高は進んだが、為替市場は秩序的だ」と述べ、公の場で日本の見解に真っ向から反論してみせた。麻生氏は同日「今日現在でみれば激しい動きではないのは確かだ」と釈明してみせたものの、市場が注目する国際会議の場で、為替介入をけん制した米国の冷淡さが際だった。

 第2次安倍政権が発足した2012年12月から円相場は5割も円安・ドル高に振れた。この間、米政権は黙認を続けてきた。米国は2008年のリーマン・ショックで大規模な量的緩和政策(QE)に踏み切り、為替を大きくドル安・円高に動かして景気を立て直した経緯がある。アベノミクスによる日本の円安誘導策を認めてきたのは、08年のドル安誘導への負い目があるからだ。

 その米政権がG20の場でわざわざ冷淡さを見せつけたのは「日本の構造改革の遅れへのいらだちがある」(米議会関係者)。ルー氏は「日本は外需でなく内需に目を向ける必要がある」とも述べ、円安頼みの政策運営から「野心的な構造改革」に政策転換するよう安倍政権に強く促した。

2つの法案注視

 米国がとりわけ注視してきたのは「『脱時間給』法案と、カジノを含む統合型リゾート(IR)法案」(米議会関係者)だ。脱時間給法案は労働時間ではなく成果に賃金を払う仕組みで、米投資家らは日本企業の働き方改革につながると注目してきた。IRは米レジャー産業を中心に対日投資の起爆剤となる。

 ただ両法案ともに今国会の審議が遅れて、早期実現のメドがたたない。ワシントンのG20会議は「通貨安誘導の回避」と「一段の構造改革」で一致しており、真逆にも見える日本の動きに米当局のいらだちは募った。

 もっとも、そのいらだちは米国の余裕のなさの裏返しでもある。ドルの総合的な強さを示す実効レートでみると、1年半前に比べ依然15%もドル高水準だ。ドル高は輸出減を招き、28日に発表される1~3月期の成長率は1%を切るとの予測がある。6年半の拡大局面から一転、米景気には強い逆風が吹く。

 世界もドル高を望まない。ドル高が人民元安を誘発すれば、中国からの資本流出が加速し、市場の混乱が再燃しかねない。米財務省高官は「米国は世界唯一のエンジンであり続けられないし、そうあるべきでもない」と明言し、各国に世界景気の下支えを求める。

 11月の大統領選は景気と市況が左右する。戦後70年のデータでみると「7月末から10月末まで株価が上昇すれば、8割超の確率で与党の候補者が大統領になる」(S&PキャピタルIQのサム・ストーバル氏)という。

 逆に市況が悪化して野党・共和党に有利に働けば、ドナルド・トランプ氏ら共和党の大統領就任が現実味を増す。当局が景気下振れと株価下落につながるドル高を警戒するのはそのためだ。トランプ氏は日本を為替操作国と名指しで批判しており、円売り介入は同氏への二重の追い風になりかねない。

 「秩序的か、無秩序か」。この言葉を巡って日米当局は暗闘を繰り広げたが、皮肉にもルー氏の一言は、秩序的と米国がみた為替市場に円高圧力というヒビを入れたのは間違いない。5月に日本で開く主要7カ国(G7)会議は、通貨協調の立て直しが課題となる。

(ワシントン=河浪武史)



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