真相深層 柳井氏、孫氏に「待った」 ソフトバンク、米携 帯統合断念の舞台裏ワンマン体質、取締役会が重し 2017/11/25 本日の日 本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「真相深層 柳井氏、孫氏に「待った」 ソフトバンク、米携帯統合断念の舞台裏ワンマン体質、取締役会が重し」です。





 ソフトバンクグループ傘下の米携帯電話4位スプリントと、同3位のTモバイルUSの統合交渉が今月破談、孫正義会長兼社長が描いた米携帯電話市場の再編は振り出しに戻った。スプリントの経営権固持を強硬に主張したのは、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長らソフトバンクの取締役だった。交渉劇の裏に何があったのか。

決算について説明する孫氏(6日、東京都中央区)

 10月27日午前、東京・汐留のソフトバンク本社が入るビル26階の会議室。孫氏は取締役に「(Tモバイルの親会社である)ドイツテレコムは経営権を手放すつもりはない。このままでは交渉は破談する」と語りかけた。

 これに対し、柳井氏や英半導体設計のアーム・ホールディングスのサイモン・シガース最高経営責任者(CEO)ら出席者のほぼ全員が「スプリントの経営権を手放すべきではない」と主張、数カ月にわたる交渉に事実上終止符が打たれた。

シナリオに誤算

 ソフトバンクは2013年にスプリントを買収して米携帯市場に参入した。宮川潤一最高技術責任者(CTO)らを派遣して通信網を立て直したが、経営再建は緒に就いたばかり。次世代超高速通信「第5世代(5G)」への投資を考えても、Tモバイルとの統合は孫氏の悲願だった。

 誤算はTモバイルの業績回復だ。4年前にソフトバンクがスプリントを買収した時、Tモバイルは親会社のドイツテレコムのお荷物だった。当時は米連邦通信委員会(FCC)の反対に遭い経営統合は断念したが、ソフトバンク側は「いずれFCCは態度を変える」と考えていた。

 そのTモバイルが急成長し稼ぎ頭になったことで、ドイツテレコムも同社の位置づけを成長事業に変えた。経営権を握れるとのソフトバンクのもくろみは崩れた。

 孫氏らは統合に向け、様々なケースを模索した。ドイツテレコムに新会社の筆頭株主の座を譲っても、孫氏が会長につくなどして経営に影響を与え続ける、一度経営権を手放しても数年後に買い戻す――など。ギリギリの駆け引きの結果、ドイツテレコムと10月には統合に向けて大筋合意した。

 ここでソフトバンクの取締役会が待ったをかけた。スプリントの時価総額はTモバイルの3分の2程度。株式交換をすれば、新会社の持ち株比率はソフトバンクが下になる。取締役会は「会社の規模を拡大しても米携帯市場への影響力が下がってしまえば元も子もない」と結論した。

 孫氏のワンマン企業とみられがちなソフトバンクだが、実は取締役会が重要な役割を果たしている。16年にアームを買収した際は柳井氏が背中を押した。11年に東日本大震災の後に孫氏が社長を辞めると言い出した時は慰留している。

 孫氏が就任前のトランプ米大統領と電撃会談をした際、柳井氏らは「取締役会にひと言もなく、何事だ」と不満をぶちまけ孫氏が謝罪する一幕も。ある関係者は「孫さんも柳井さんの言うことは聞く」と打ち明ける。

なお一定の勝算

 振り出しに戻った米携帯市場の再編だが、孫氏にはなお勝算がある。英アームの存在だ。アームは携帯向けの半導体設計で世界9割のシェアを誇る、ソフトバンクが目指す情報革命の中核的な企業だ。半導体を握っていれば、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」や5Gの時代を有利に戦える、というのだ。

 ただ、ベライゾンとAT&Tという米携帯2強に比べ、スプリントの契約者数は半分以下、売上高では3分の1だ。なお生き残りは厳しい。再編を見据え、ソフトバンクの取締役会が直面する課題はまだ多そうだ。

(佐竹実)



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