真相深層 漁業管理譲らぬ日中韓 カツオ・マグロ…東アジ アは乱獲の海に 2017/4/12 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「真相深層 漁業管理譲らぬ日中韓 カツオ・マグロ…東アジアは乱獲の海に」です。





 東アジアで水産物の奪い合いが深刻になっている。資源量の減少をくい止めるためには実効性のある漁業規制の整備が急務だが、国内外ともに調整は難航する。水産資源が減少し、各国が資源を取り合う悪循環に陥りかねない。

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 「韓国とは議論ができない」――。水産庁の担当者はため息をつく。日韓両国は協議の上、互いの排他的経済水域(EEZ)内の漁を認めている。例年は協定が効力を失う6月末までに新たに協定を結んできたが、2016年は協議をまとめられず、現在も交渉が続く。16年7月以降は互いのEEZ内で漁ができない状況だ。

相次ぐ拿捕事案

 交渉が平行線をたどる理由を、水産庁は「韓国が違法漁船を取り締まらないためだ」と主張する。許可のない韓国漁船が日本のEEZ内で漁をして拿捕(だほ)される例が相次ぐ。16年に水産庁が外国船を拿捕した6件のうち、韓国船は5件を占める。

 日本は韓国が主に漁獲するタチウオに漁獲枠を設定しているが、韓国は「漁獲枠が小さく漁民の生活が成り立たないため、違法漁船が多いと主張している」(水産庁)。資源保護のためのルール順守よりも経済が優先している格好だ。

 中国の圧力も高まっている。中国は自国のEEZ内の資源が乱獲で枯渇。どの国でも原則として自由に漁獲できる公海で漁をする姿勢を強めている。政府は漁業者に遠い公海までの燃料費を補助し、国ぐるみで公海に乗り出し、サバやサンマに狙いを定める。

 公海での漁は事実上早い者勝ち。「特に状況が深刻なのがカツオ」(マルハニチロの片野歩マーケティング部副部長役)だ。南太平洋は様々な国の船がカツオ漁をおこなう。「船はこの10年急増している」(水産商社)

 ツナ缶の需要増に応じて総漁獲量は増加傾向だが、1隻がとる魚の量は減っている。船の操業コストを割り込まないための漁獲競争は激しさを増す。

 南太平洋で捕まえるカツオの増加は、日本の春の風物詩である初ガツオにも影響を与える。日本の太平洋沿岸にあらわれるカツオは、南太平洋を通って北上するためだ。水産庁によると15年の国内のカツオ水揚げ量は5年前と比べて2割減った。

 日本も乱獲を人ごとといえる状況ではない。国内では16年の秋以降、クロマグロの漁獲規制への違反が相次いで発覚した。資源保護に取り組んできた漁業関係者の間に衝撃が走った。

 日本周辺を含む中西部太平洋でマグロ資源を管理する国際委員会(WCPFC)は14年、資源保護を目的に30キログラム未満の幼魚漁獲量を02~04年平均の半分以下に抑え、親魚も平均を超えないルールを決めた。この決定に基づいて日本では沿岸クロマグロ漁を承認制とし、地域や漁法ごとに漁獲上限を設けている。

過少報告まん延

 水産庁が3月にまとめた調査結果によると、9県で漁獲量の未報告および報告内容の誤りがあったものが約120トンあった。特に長崎県、静岡県、和歌山県の3県では無承認の操業による漁獲が約14トンあった。

 特に状況が深刻なのは長崎県の対馬周辺の海域だ。今回発覚した無承認の漁獲量のうち、対馬のものが9割を占めている。他の地域と大きく状況が異なり、少々の間違いという範囲を超えているとの指摘は多い。水産庁は「まじめに漁獲管理に取り組む漁業者の意欲をそいでしまう」と懸念する。

 資源保護に本腰が入らない日本に対し、資源保護の取り組みが進む欧米の目は冷ややかだ。片野氏は「欧米では悪い例として日本をあげて戒めている」と指摘する。

 欧米でも過去には乱獲に走った歴史がある。ノルウェーではニシンが激減。1980年代には船を減らした漁業者に補助金を出すことで競争を緩和した。事態を打開すべく、漁業者の反発を受けつつもトップダウンで資源保護策を導入して成果をあげてきた。

 持続可能な漁業による水産物でなければ購入しない姿勢が消費者に定着、小売業者も一度に大量に漁獲できる漁法でとった魚を避けるなど、資源保護が世界的な潮流だ。漁業者から消費者まで、水産物に関わるすべての人の意識変革が求められている。

(山田彩未)



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