真相深層 空飛ぶ車、離陸近づく? ウーバーなど「3年後 に実用化」 2017/8/17 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「真相深層 空飛ぶ車、離陸近づく? ウーバーなど「3年後に実用化」」です。





 次世代モビリティー(移動手段)の有力候補として「空飛ぶクルマ」が急浮上している。無人機ドローンの技術を使った車のような形の飛行体の開発に世界の有力企業が次々に着手した。ライドシェア(相乗り)など効率的な移動サービスの普及と自動運転やドローンの技術向上が相まって、渋滞を空に飛んでかわそうとする動きが現実味を帯びている。

アーバンエアロの空飛ぶクルマ=同社提供。

 イスラエル北部メギド。縦6.2メートル、横2.15メートルとヘリコプターの4分の1ほどの大きさの物体がふわりと浮かぶ。カブトムシのような小型機は現地ベンチャー、アーバンエアロが手掛け200回の試験飛行を終えた。

 地上を走るわけではないが目にした人の多くは映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を想起して「空飛ぶクルマ」と呼ぶ。最高時速は180キロメートル、荷物は約760キログラムまで積める。人やモノを運ぶ手段として実用化を目指すラフィ・ヨリ最高経営責任者(CEO)はイスラエルの政府系軍事企業で自動運転ドローンの開発を担当し、アーバンエアロを創業した。

 回転翼はヘリに比べ小さく羽根はむきだしにしていない。これを運転席の前後に置き、機体と一体化した。騒音が小さく強風に強い。小回りが利き、ヘリで回転翼が邪魔になる場所にも入る。

 イスラエル政府の支援を受け、3年後に販売を始める。軍事利用が前提のため民生用の市場や規制が立ち上がる前に実用化のメドが立った。無人機も開発し、救助用や4人乗り旅客用も順次投入する。ヘリより低速で耐荷重も小さいが小型という長所を生かし、市場の4分の1程度を切り崩す青写真を描く。

 空飛ぶクルマの計画は各地で相次いでいる。2020年に空飛ぶタクシーの実現を目指す米ライドシェア最大手ウーバーテクノロジーズはヘリ大手ベルヘリコプターと組み機体の開発を始めた。

 欧州航空機大手エアバスは21年まで、スロバキアのエアロモービルは20年までの販売を目指す。米グーグル創業者が出資する米キティホークは試験飛行を始めている。トヨタ自動車も若手有志が開発を進める試作機で20年の実用化を目指す。

 技術的には実用化が近い。スマートフォンの進化で高性能センサーなど電子部品の価格が劇的に下がったことが背景にある。モーターや電池の性能も上がり、コストを抑えながら機体の向きやスピードを細かく制御する技術が高まった。これを受けドローンの産業活用が始まり、その技術を転用して人間も載せる構想が世界のモビリティー論争をにぎわす。

 地上を走る車に比べたメリットと実用化のハードルを勘案し、いずれ世界で広がるモビリティーと各社は見た。自動運転の専門家、米デューク大のメアリー・カミングス教授は「障害物の少ない空の自動運転は地上ほど複雑なソフトは必要ない」と指摘する。

 垂直に離着陸し、滑走路がいらないため、渋滞解消の手段として都市計画分野で注目を集めている。アーバンエアロには米州の多くの都市から問い合わせが来る。ウーバーは自治体と組んで米テキサス州ダラス、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで導入に向けた計画を進めている。

 ただ技術の壁は破れても規制を乗り越えられるかは分からない。無人の小型ドローンは米国で飛行ルールが具体化されつつある。だが、そこに空飛ぶクルマが加わった場合の空の混雑を整理する具体的な仕組みはまだない。墜落やテロのリスクが大きい人口密集地を避けるため、当初は発着陸の場所も増やしにくい。

 カミングス教授の研究チームは「今後10年は有人飛行、次の10年は部分的な自動運転、その次の10年で完全自動運転が実現する」と予測する。市場形成の時期は見えないがライドシェアの普及や自動運転の技術開発により「移動」の概念は確実に変わろうとしている。アーバンエアロはイスラエル政府の後ろ盾を得て事業化の足がかりをつかんだ。社会全体で必要な技術との認識が深まり、各国の政府や自治体が導入に向けて動き出せば、実用化は一気に近づく。

(シリコンバレー=兼松雄一郎)



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