真相深層 米で息吹き返した親台湾派 トランプ氏「1つの 中国に縛られず」 2016/12/14 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「真相深層 米で息吹き返した親台湾派 トランプ氏「1つの中国に縛られず」」です。





 トランプ次期米大統領が米中関係の常識を覆す言動を繰り返している。2日に台湾の蔡英文総統と電話協議し、1979年の台湾との断交以来、初めて米大統領や次期大統領と台湾総統とのやり取りを公表した。台湾を中国の一部とみなす「一つの中国」の原則にも「縛られない」と明言。米中、中台関係を緊張させかねない電話協議の背後で何が起きていたのか。

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■米誌論文に関心

 トランプ氏と蔡氏の電話協議後、ワシントンで話題の論文がある。11月8日の大統領選の前日に米誌「フォーリン・ポリシー」に掲載され、台湾への武器の全面的な供与を訴える内容だ。執筆者は米カリフォルニア大のピーター・ナバロ教授と、米下院軍事委員会で海軍力小委員会委員長のアドバイザーを務めたアレキサンダー・グレイ氏。

 トランプ氏の外交顧問でもあるナバロ氏は台湾への武器供与を拒み続けたオバマ政権を批判。南シナ海で海洋進出を活発にする中国に圧力をかけるために「台湾カード」の利用を勧めた。公表時点では大統領選の勝敗の行方が定かではなかったが、1カ月近くを経て大きな関心を集めた。

 トランプ、蔡両氏の歴史的な電話協議は、この論文の延長線上にあるととらえられたためだ。偶発的な出来事ではなく、オバマ政権下で抑えられていた親台湾派が用意周到に準備していたとの事実も波紋を広げた。

 米紙ニューヨーク・タイムズによると、その中心人物は96年大統領選の共和党候補、ボブ・ドール元上院議員だ。親台湾派のドール氏は党主流派の重鎮としていち早くトランプ氏を支持した。トランプ氏を共和党候補に正式指名した党大会にも車いすで出席した。

 ドール氏と所属法律事務所は半年で、トランプ氏側へのロビー活動費として14万ドル(約1610万円)を受け取ったとされる。

 電話協議の前には新政権の中枢、次期首席大統領補佐官にプリーバス共和党全国委員長の起用が固まった。首席補佐官は内政から外交まで大統領に助言する役回りだ。

 このプリーバス氏も親台湾派だ。昨年10月に台湾を訪問し、総統候補だった蔡氏と面会した。プリーバス氏とともに保守系の米シンクタンク、ヘリテージ財団の創設者であるフルナー氏も電話協議の立役者の一人だ。

 大統領選でワシントンの多くのシンクタンクが民主党候補、ヒラリー・クリントン前米国務長官への支持に傾くなか、ヘリテージ財団はトランプ氏寄りの立場を取った。反中派として有名なフルナー氏は今年10月に訪台し、蔡氏と会っている。

 電話協議の当日、新保守主義者(ネオコン)で、ブッシュ前政権のイラク開戦を支持したボルトン元国連大使がトランプ氏と面会した。親台湾派のボルトン氏は2012年に訪台した際に「台湾は正式な国家であり、国連加盟の資格がある」とまで言い切った。

 米中、米台、中台の関係の変化は、アジアの安全保障と経済に化学反応を起こす。半面、トランプ新政権での親台湾派の台頭と重用が単純に反中を意味するわけではない。そこは硬軟両様だ。

■習氏の知己起用

 「米中双方に利益となる関係を築く」。トランプ氏は8日のアイオワ州での演説で、次期中国大使に起用した同州知事のテリー・ブランスタド氏への期待を込めた。中国の習近平国家主席と親交があるブランスタド氏は、中国とトランプ氏の政権を結ぶパイプ役だ。

 「中国は90年代半ば、台湾問題は戦争と平和に関わる問題だと伝えてきた。米国が試すべき問題だろうか」。オバマ政権の米国家安全保障会議(NSC)でアジア上級部長を務めたメデイロス氏がロイター通信に指摘したように、台湾問題を安易に扱えば、米中間の摩擦はこれまでになく高まる恐れがある。

 来年1月の大統領就任前に、すでに米台関係で「レガシー(功績)」を残したトランプ氏。中台を巡る「てんびん外交」は米国に果実をもたらすのか、それとも危機を誘発するのか。世界はその行方を注視している。

(ワシントン=吉野直也、台北=伊原健作)



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