真相深層 習主席に水面下の圧力米中会談、凍り付いた笑顔の裏 米、突きつけた制裁リスト 2017/4/27 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「真相深層 習主席に水面下の圧力米中会談、凍り付いた笑顔の裏 米、突きつけた制裁リスト」です。





 夏のような日差しが降りそそぐ米フロリダ州。6~7日、トランプ米大統領と初めて会談した中国の習近平国家主席は終始、笑顔を振りまき続けた。だが、その笑顔は凍り付いていた。トランプ氏が会談のさなかにシリア攻撃に踏み切り、北朝鮮や通商を巡る問題で優位に立ったことだけが原因ではない。会談前から、米国は水面下で中国を揺さぶり続けた。

中国の習主席を別荘「マール・ア・ラーゴ」で迎えたトランプ米大統領(6日、パームビーチ)=ロイター

中国企業を追加

 首脳会談を2週間後に控えた3月下旬、米国務省は対米取引を禁じる制裁対象リストに、北京市内にある中国企業の名前を加えた。「イランのミサイル開発計画に関与した」との理由だった。

 北朝鮮と違法に取引する中国企業があれば、同様の制裁を加える。核・ミサイル開発をやめない北朝鮮の後ろ盾である中国への明らかなけん制だ。しかも、この中国企業は特殊な背景があった。

 中国のシリコンバレーと呼ばれ、ベンチャー企業が集まる北京の「中関村」。米国の制裁対象となった「北京中科華正電気公司」が公表する住所を訪ねると、警備員が入り口を守る巨大な敷地にたどり着いた。門から見える建物には「中国科学院電工研究所」。中国国務院(政府)に直属する研究機関だった。

 「この会社は敷地内にあるはずだ」。警備員にただすと、記者が見せた資料をまじまじと見つめて「そうだ。この中にある。面会予約はあるのか」。何度電話しても出ないので連絡先を教えてほしいと答えると、「予約のない人は入れられない」。門前払いだった。

 中国政府がイランや北朝鮮のミサイル開発を黙認している証拠をつかんでいるぞ――。制裁対象の名前を並べただけの米国務省資料の裏側には、中国への強烈なメッセージが込められている。

 3月上旬、米国は中国通信機器大手、中興通訊(ZTE)に対し、北朝鮮などに通信機器を違法に輸出したとして約12億ドル(約1300億円)の罰金を科した。同社の2016年12月期の最終損益は赤字に転落した。

 外交筋によると、米国は北朝鮮の核・ミサイル開発に関わる中国企業や金融機関を調べ上げている。首脳会談前に突きつけたのはその一部だ。

 畳みかけるように、トランプ氏は初めて習氏と会った6日、シリア攻撃のゴーサインを出した。北朝鮮問題でも武力に訴える構えをちらつかせ、習氏から北朝鮮の核放棄に向けた「協力強化」という合意をもぎ取った。

 次の一手を迫られた習氏。会談終了後、トランプ氏とともに散歩した。現地では「習氏は笑顔を見せないかもしれない」との見方も浮上していた。散歩はたったの3分間。背広にネクタイという堅苦しい装いながら、習氏は何とかほほ笑んでトランプ氏と握手した。

 会談前から揺さぶりをかけられながらも、なぜ習氏はトランプ氏との早期会談にこだわったのか。国内の政治情勢に背中を押されたからだ。

秋の党大会意識

 中国では秋に5年に1度の共産党大会を控え、最高指導部の人事の入れ替えに向けた権力闘争の季節に入っている。習氏が人事の主導権を握り続け、スキをつくらないようにするためには、外交の安定が絶対条件となる。

 特に、世界の大国の指導者を自負する習氏にとって、米国に自らの立場を理解させたという国内向けの演出が必要だった。中国国営中央テレビは、芝生の上をトランプ氏と肩を並べて歩く習氏の貼り付けたような笑顔を繰り返し放送した。

 トランプ政権は首脳会談直後から韓国への核の再配備をちらつかせ、朝鮮半島周辺に空母を派遣するなど圧力を強めた。早く次の手を打たなければ中国の安全保障環境は悪化するばかりだが、米国に譲歩しすぎれば国内で弱腰の批判を受ける。

 党大会まではまだ半年ある。習氏はトランプ氏との個人的な関係構築を国内に示す当初の目的は達成したが、北朝鮮への対処だけでなく、対米黒字の削減に向けた具体策という宿題を残した。「早すぎる会談はリスクも大きい」。訪米前から中国国内でささやかれていた懸念が再び頭をもたげ始めている。

 

(北京=永井央紀)



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