真相深層 習氏、ネット統制に執念 中国当局、個人向け越 境VPN提供を摘発情報制限、経済成長の壁に 2017/9/7 本日の日本経済 新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「真相深層 習氏、ネット統制に執念 中国当局、個人向け越境VPN提供を摘発情報制限、経済成長の壁に」です。





 中国当局は国外のネットワークに接続するVPN(仮想私設網)の規制に乗り出した。中国のインターネット規制を回避するために利用されることが多い個人向けのVPNサービスを摘発し、世論統制を強める狙い。今のところ社内システムへの接続などに障害は起きておらず、企業の運営に悪影響は出ていないようだが、海外情報の制限は中国経済の成長の阻害要因になるのは確実だ。

テンセントが提供するAI会話サービス「小氷」。共産党の批判はしないよう改められている

規制回避許さず

 「不法なVPNアプリを排除しなさい」。浙江省のネット規制当局は8月17日、同省に本拠地を置く中国ネット通販最大手、アリババ集団の通販サイト「淘宝網(タオバオ)」の責任者を呼び出して指導したことを明らかにした。その後、タオバオからVPNアプリが一斉に消えた。

 7月末には米アップルがスマートフォン(スマホ)「iPhone」に搭載するアプリ販売市場「アップストア」の中国版でVPNアプリの販売を中止。中国ブランドのスマホでもVPNアプリの販売はされず、中国での入手は難しくなった。

 中国当局は1月、許可を得ていないVPNサービスの提供を禁じ、摘発を始めた。情報統制を強化する「インターネット安全法」の6月施行を前に、ネット規制の回避を目的とした個人向けアプリを標的にした。

 多くの外国企業が日常業務に使うVPNは取り締まりの対象外。中国企業も情報保護のためにVPNを使い、工業情報化省幹部は「グローバル企業の運営に影響を与えるものではない」と明言。日本貿易振興機構(ジェトロ)も日本企業からVPN関連で支障が出たとの連絡はないという。

 ただ、当局のネット統制は加速する。国家インターネット情報弁公室は8月11日、国家の安全を脅かす情報を放置しているとして、騰訊控股(テンセント)、新浪(シナ)、百度(バイドゥ)の大手3社への調査に着手。3社の利用者は合計で13億人を超える。中国ネット企業幹部は「3社のサービスを押さえることで中国のネット世論をコントロールする狙いだ」との見方を示す。

 共産党がネット検閲に本格的に乗り出したのは20年近く前。民主化運動やわいせつ画像など当局が「有害」として指定したサイトを自動的に閲覧できないようにした仕組みを構築した。「金盾工程」や「グレート・ファイアウオール(ネットの長城)」と呼ばれる。

 最近はブログで発信する利用者が多いため、ネット大手は当局が指定した用語を自動的に削除する仕組みを導入。自動検閲から漏れた内容をチェックするため、数千人規模の人員で削除する体制を敷いているという。中国企業は当局の指示に従うだけだ。

米中パイプ太く

 米国の有力企業の対応は分かれる。グーグルとフェイスブックは検閲に反対し、中国で利用できない状況が続く。一方、アップルやアマゾン・ドット・コムは中国の規制に対応。アップルはスマホの大半が中国製で中国当局と対立するのは難しいとされる。外資系証券アナリストは「中国のパイプが多く、利益を共有する米国企業は多い」と指摘する。

 8月23日、湖北省武漢で国家インターネット安全学院の建設が始まった。総投資額は3500億円。2019年に開校し、約1万人の訓練を見込む。サイバーセキュリティーの権威、沈昌祥氏は「中国による完全独自のシステム構築が必要だ」とし、次世代のネットの長城を構築する構えだ。

 「ネットの安全がなければ、国家の安全はない」。権力基盤固めを狙う習近平国家主席は持論に従い、中国独自のネット空間の確立に執念を燃やすが、反作用は大きい。

 VPNアプリの利用者はグーグルなどを使ってネット検索したり、フェイスブックなどで情報交換したりすることが多い。北京の大学で教える外国人講師は「世界の最先端の研究結果に触れ、多角的な視点をはぐくむ機会が減る」と危ぶむ。

 ベンチャー投資家も「ビジネスの種を見つけたり、世界経済の動きを見極める情報が減ったりすれば、起業や経営の判断に支障をきたす恐れもある」と懸念する。ネット言論の統制は、長期的に中国の経済社会へのマイナスが避けられない。

(北京=多部田俊輔)



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