真相深層 習氏、経済は「新常態」 中国、ぬぐえぬ減速懸念 政策運営に自信 2014/09/06 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合1面にある「真相深層 習氏、経済は「新常態」 中国、ぬぐえぬ減速懸念 政策運営に自信」です。





 中国景気の視界が晴れない。8月は製造業の景況感指数が半年ぶりに低下した。主要都市の住宅の値下がりもあり、金融市場は中国経済の想定外の減速に身構えるが、習近平国家主席に動じる気配はない。むしろ「新常態(ニューノーマル)に平常心で臨め」と、経済政策運営に自信を深めている。

成長鈍化にも「平常心」を呼びかける中国の習国家主席

成長の「質」重視

 8月上旬、共産党機関紙、人民日報が1面に連載した解説記事が関心を集めた。「新常態の中国経済」というタイトルで、要約すれば世界2位の規模に発展した中国経済は高速成長をもはや維持できず、安定成長の下で経済の「質」を高めるべきだとの内容だった。

 「新常態」とは2008年秋のリーマン・ショック後、投資家の間で広がった「ニューノーマル」の概念の中国語訳だ。信用の急激な膨張と収縮を経験した世界経済は、金融危機から立ち直っても元通りにはならないという考え方だ。

 中国でも経済人や学識経験者が中国経済の減速は景気循環によるものではなく構造的な変化という意味で早くから使っていた。そのキーワードが再び関心を集めたのは、人民日報が習指導部の意向を発信するメディアであり、記事の掲載時期が政権にとって重要なタイミングだったためだ。

 連載は習指導部や長老らが河北省の避暑地、北戴河で毎夏恒例の非公式会議を開いていた時期と重なる。直前には前最高指導部の一員、周永康氏の立件・審査を習指導部として公表し、政権の発足前からくすぶり続けていた権力闘争に一定の区切りをつけた。

 国有企業の幹部は人民日報の連載を「習氏が自らの経済政策の運営方針をあらためて宣言した」と緊張した面持ちで受け止める。

 実は習氏が「新常態」を公式に表明したのは今年5月だった。北京を離れ、河南省を視察した際に「新常態に適応し、平常心を保て」と述べた。それから「新常態」のキャンペーンに乗り出すまで約3カ月かかったのは、周氏の処分という政治問題が横たわっていたからだ。

 そもそも地方視察で「新常態」に初めて言及したのは、習氏が「強い指導者」になれるかどうかを様子見していた地方の官僚への強烈なメッセージだった。「古いやり方を漫然と続けるのではなく、オレのやり方を早く理解せよ」というのが習氏が「新常態」に込めた意味だ。

 経済成長率が10%を超えた高速成長への幻想を捨て、多少ふらつきながらも7%台半ばの安定成長を維持する習氏の経済政策運営は内外に浸透してきた。大規模な刺激策は取らず、小刻みな政策調整で景気を下支えする手法も定着し、習指導部は今年後半の経済政策運営の基本方針とすることも決めた。

構造改革カギ

 問題は、中長期に安定した成長軌道を描くための構造改革を実行できるかだ。昨秋の党中央委員会第3回全体会議(3中全会)では「改革の全面深化」をうたい、市場を重視する改革を進める方針を決めた。

 しかし構造問題の象徴である重工業の生産過剰の解消はなかなか進まず、全体像が不透明な「影の銀行(シャドーバンキング)」に対する監督強化もまだ途上だ。中国当局は許認可の削減など手続き面の見直しを改革の成果と訴えるが「市場の対外開放などの改革は期待したほど進んでいない」(外資系銀行幹部)。

 非効率な金融の流れをただすために必要な金利の自由化も「我々は1~2年で実現できると思っているが、国内外の経済状況など外部条件に左右される」(中国人民銀行の周小川総裁)と、先行きは依然不透明だ。

 中国では国有企業の強化やインターネット規制もすべて「改革」と称する。習指導部は中速成長時代に合わせてギアを本当に入れかえたのか。改革が世界の期待に沿わなければ、「新常態」は実行力を伴わない中国の言い訳を象徴することばになりかねない。

(北京=大越匡洋)



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