真相深層 韓国、「実利」路線に傾斜 世界遺産問題や50年式典、硬軟織り交ぜ 任期折り返す朴氏、勝負の年 2015/07/24 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合1面にある「真相深層 韓国、「実利」路線に傾斜 世界遺産問題や50年式典、硬軟織り交ぜ 任期折り返す朴氏、勝負の年」です。





 韓国政府が日本へのアプローチを強めだした。「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録問題や日韓国交正常化50年式典への両首脳出席でみせた、硬軟を織り交ぜながら日本から「実利」を得る戦略だ。主導している朴槿恵(パク・クネ)大統領は任期をにらんだ自らとの戦いでもある。

日韓国交正常化50年式典に出席した朴大統領(6月22日、ソウル)

「周到に準備」

 15日、韓国は2012年に長崎県対馬市で盗まれ韓国に持ち込まれた仏像2体のうち1体の返還を決めた。なぜこのタイミングなのか。5日に決まった明治日本の産業革命遺産の世界遺産登録をめぐり、予想を超える日本の世論の硬化に危機感を強めたと関係者は解説する。秋の日韓首脳会談をテコに従軍慰安婦問題を年内に決着させる朴氏のシナリオに火種を増やしたくないとの判断だ。

 路線の修正は「都市外交」から始まった。昨年7月、朴氏は、ソウル市長と会談するため訪韓した舛添要一東京都知事と面会した。1年半ぶりに青瓦台(大統領府)で会う日本の政治家だった。「周到に準備されていた」と知事周辺は明かす。舛添氏は現職の国会議員ではない。第1次安倍政権で厚生労働相を務め、安倍晋三首相とパイプがある。駐日大使を経験した李丙琪(イ・ビョンギ)氏と菅義偉官房長官の首脳側近ラインが動いたとの情報もある。この2カ月後、韓国政府はソウルで日中韓の外務次官級会談を主催し、年内の外相会談→翌年の首脳会談とのシナリオを練った。

 11月、ミャンマーでの国際会議の冒頭、安倍首相と笑顔で言葉を交わす朴氏の姿が人目を引いた。ともに歴史問題で日本を非難した中国の習近平国家主席が3日前に安倍氏と会談し、韓国内に「外交無策」批判が渦巻いていた。企業の間でも円安・ウォン高に危機感が広がり、朴氏の支持率は下落していく。今年2月、朴氏は事実上の政権ナンバー2となる大統領秘書室長に知日派で知られる李氏を起用した。

 安倍首相による4月の米議会演説が、韓国の求める植民地支配や謝罪に触れず、しかも米国で一定の評価を受けたことが拍車をかける。日韓両政府が東京とソウルでそれぞれ開く国交正常化50年式典が1カ月後に迫った5月、韓国政府は安倍首相と朴大統領による両式典への「相互出席案」を日本側に打診した。

 朴大統領は8月から任期5年の後半期に入る。韓国大統領は再選が認められず、次期大統領選に向けた動きが始まると、抑えこまれていた政権への不満が噴き出し、現職大統領の求心力が弱まっていくのが通例だ。与野党が雌雄を決する韓国総選挙も来春に控え、韓国の関心は次第に次の政権に向かう。朴氏にとって今年は「勝負の年」だ。

 日韓の懸案となっている慰安婦問題について、朴氏は6月の米紙インタビューで「相当の進展があった。いまは最終段階にある」と語り、周囲を驚かせた。年内決着へのこだわりと自らの手で解決する意志の表れだ。

「歴史」なお強硬

 韓国政府内で2つの「変化」がささやかれる。「日本が提案し、韓国が応じることで難題を動かしてきた」対日交渉スタイルが安倍政権下で変わった点。もう一つは韓国で大統領が交代するたびに良好→悪化を繰り返してきた日韓関係を、最悪期からスタートした朴政権が好転させることへの期待だ。面談よりも文書での報告や電話を好むとされる朴氏が今年に入り、立て続けに日本の要人に会い、首脳会談への環境整備を求めている。

 世界遺産問題は日韓交渉の難しさを改めて印象づけた。登録を最優先した日本に対し、韓国は植民地支配時代に施設で働いた朝鮮半島出身者の「徴用工」の表現をめぐり「強制労働」を最後まで強硬に主張した。一方で日本政府には「投票になれば負け戦だった。韓国で相次ぐ徴用工裁判に波及させないボトムラインは守った」と今回の決着を評価する声もある。

 ガラス細工のようだ、と日本政府の交渉関係者はため息をつく。いま韓国政府がじっと目を凝らすのは、戦後70年の「安倍談話」だ。6月22日、日韓50年式典出席に先立ち、青瓦台で額賀福志郎・日韓議員連盟会長と会談した朴大統領は「両国が和解と協力に出られるように期待します」と安倍談話に注文をつけた。日韓の暑い夏が続く。

(ソウル支局長 峯岸博)



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