真相深層 韓国、弱い政府の泥縄 徴用工や慰安婦の合意軽 視 市民団体席巻、底流に保革分裂 2017/9/1 本日の日本経済新聞 より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「真相深層 韓国、弱い政府の泥縄 徴用工や慰安婦の合意軽視 市民団体席巻、底流に保革分裂」です。





 日本統治時代に労働力として動員されて日本企業で働いた朝鮮半島出身の徴用工や従軍慰安婦をめぐり、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、日韓両政府の結んだ協定や合意を蒸し返すような発言を繰り返して物議を醸した。「未来志向の日韓関係」(文氏)に逆行すると日本側には懸念が強い。韓国でなぜ国家間の取り決めが軽視されるのか。市井の人々はどうみているのか。

 31日も徴用工像はそこに立っていた。ソウル中心部の竜山(ヨンサン)駅前広場は国有地。竜山は米軍基地や日本人の駐在員家族が多く住む地区にも近い。像を設置した市民団体に鉄道施設公団は8月末までの撤去要請文を送っていた。

 主導したのは労組、全国民主労働組合総連盟(民主労総)など2団体を中心とする市民グループ。ソウルの日本大使館前にある慰安婦少女像と同じ彫刻家が制作し、像のそばの石碑には「強制動員された朝鮮人がここ竜山駅から列車に乗り出発した」とある。

民心の反発懸念

 日韓両政府はともに、1965年の国交正常化の際に結んだ請求権協定で、徴用工の未払い賃金や被害補償などの請求権問題は解決済みとの立場をとる。だが、文氏は、徴用工個人の日本企業への請求権は消滅していないとの認識を示した。

 ソウルの南大門市場で市民に聞いてみた。「政府同士が合意しても当事者間で解決すべき民事の問題は残る」(20代会社員)との意見が多い。韓国は87年の民主化以降、軍事独裁時代の反省から「官」の力が低下した。帝王と称される大統領の一方で「弱い政府」が特徴だ。とりわけ革新系政権下では「被害者の声を反映していない」(30代店員)とみれば、政府間の合意より人権を重視する立場が支持される。

 弱い政府が極度に恐れるのが、正義のニュアンスを持つ世論=民心だ。市民団体やメディアによって助長されて巨大化する。道路や国有地に無許可の慰安婦少女像や徴用工像が置かれても、行政は民心の反発を恐れて撤去に二の足を踏む。

 韓国には「国民情緒法」という目に見えない最高法規があるといわれる。文氏は「最終的かつ不可逆的な解決」を盛った2015年の日韓両政府の慰安婦合意についても「国民の大多数が情緒的に受け入れられない」と日本側に伝えている。

市民は使い分け

 合意軽視の風潮は分断国家の内部対立が底流にある。70代女性は「朴槿恵(パク・クネ)が約束したものは信頼できない」と語気を強めた。日本との請求権協定や慰安婦合意に導いたのは朴正熙、槿恵父娘。歴代保守政権の政策を「積弊」と呼び「積弊の清算」を訴えて当選した文氏は「そのまま受け入れるわけにはいかない」(周辺)。保守と革新が交互に政権を握った韓国は政策の継続性が保たれにくい。

 日本政府への反感が「日本嫌い・日本人嫌い」につながらないのも韓国人の特徴だ。韓国暮らしで日本人が被害に遭った話は聞かない。むしろ韓国人は日本人とわかると得意げに日本語で話しかけてくる。日本人の印象は「清潔」「礼儀正しい」と総じて好意的。日本旅行は相変わらずの人気で街に居酒屋があふれ、書店の日本コーナーには若者が群がる。「日本に対して過去と現在、歴史とその他を使い分ける『ツートラック』の国民性」(大学教授)がある。

 南大門で30代女性は「日本の友人とは歴史の問題を話さないようにしている」。60代男性は「大使館前に少女像を置くようなやり方で感情を表現したくない」と話した。歴史教育を受けた誰もが抱く「反日」感情は、普段はしまわれていて、歴史が話題になると一斉に引きだされる。その使い分けには驚くばかりだ。

 日本大使館前の少女像付近で日本政府に謝罪や賠償を要求しているのは左派・革新系団体の「常連」が多い。竜山駅の徴用工像の前で足を止める韓国人の通行人を見つけるのも難しい。像への関心が広がっているようにはみえない。文政権が国内向けに「過去」をクローズアップすることによって日本人を韓国から遠のかせている現実がある。

(ソウル支局長 峯岸博)



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