真相深層 首相に「予測可能リスク」 政権の求心力低下、 もう一つの理由 2017/7/14 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「真相深層 首相に「予測可能リスク」 政権の求心力低下、もう一つの理由」です。





 安倍晋三首相の求心力が低下している。2日の東京都議選で自民党が惨敗し、国政選挙での「不敗神話」に不安をよぎらせた。報道各社の世論調査の支持率も軒並み急落した。求心力の衰えは都議選惨敗だけではない。残り1年5カ月になった衆院議員任期と憲法改正の2つの日程も影を落とす。

 「(秋の)臨時国会が終わるまでに提出するのは十分可能ではないか」。首相は9日の記者団との懇談で、自民党改憲案の提出時期に変更はないと表明した。「スケジュールありきではないが、自民党内の作業を加速していく上で目標があった方が議論は深まる」と付け加えた。

 首相が2020年に新憲法の施行をめざすと宣言したのは5月3日の憲法記念日。その目標時期を見据え、次期臨時国会への自民党改憲案の提出→18年通常国会での発議→国民投票という日程が浮き彫りになった。衆院は与党で改憲の発議に必要な3分の2の議席を持つ。参院も改憲を支持する日本維新の会などを合わせれば、3分の2の議席がある。

 改憲の発議を考えると、衆院の現有勢力が減る危険は冒したくない。そこから次の衆院解散は18年通常国会閉幕後、つまりそこまでは「ない」という見方が永田町の大勢になった。「伝家の宝刀」と呼ばれる首相の解散権は権力の源泉だ。

 12年12月に再登板した安倍首相はそれから2年しかたっていない14年11月に衆院解散を断行した。「こんな短期間で解散に打って出ることはないだろう」。それまでの常識の裏をかいた首相の決断が野党の準備不足をつき、圧勝に導いた。

 この「小刻み解散」は「いつ解散するかわからない」という議員の恐怖心理に結びつき、首相の求心力は増した。「安倍1強」が定着した分岐点だった。その逆のことがいま起こりつつある。

 「衆院議員任期が残り1年切ったら、首相が解散権を行使したことにならない」。衆院解散の時期が読みやすくなることは、首相の求心力低下に直結する。事実上の任期満了といわれた09年8月の衆院選で、自民党は当時の民主党に政権交代を許した。

 「異論をすべて封じるとしたら何も変わらない」(石破茂前地方創生相)。安倍政権への批判が自民党内で目立つようになった。都議選惨敗がきっかけとはいえ、衆院解散の時期が絞られたことによる議員の安堵感も無関係ではない。首相の悲願である改憲の日程が衆院解散権を縛りかねない皮肉な現象だ。

 この現象は政治指導者における一つの教訓も浮かび上がらせている。「予測可能」な行動がリスクになるという点だ。トランプ米大統領の対北朝鮮政策は手詰まり状態。大統領選中の破天荒な言動からトランプ氏は「何をするかわからない」という「予測不能」のイメージが生まれ、力の源となった。

 それが北朝鮮への軍事行動を想起させ、一定の抑止力になるとみられた。大統領就任から半年近く、実像は違った。トランプ氏の対北朝鮮政策は歴代政権が失敗した中国頼みが鮮明だ。北朝鮮の4日の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射には「米国の軍事行動はない」という確信がうかがえる。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は「予測不能」を演出し、世界を振り回す。

 再び安倍首相。都議選で躍進した地域政党「都民ファーストの会」は「年内に国政新党への動きが出てくることは十分あり得る」(無所属の若狭勝衆院議員)。低迷する民進党を前提に来年後半の衆院解散を探っているとみられる首相。新たな受け皿ができるのであれば、戦略の見直しを迫られる。

 首相は来月3日にも内閣改造・自民党役員人事に踏み切る。「骨格は変えない」。9日には麻生太郎副総理・財務相、菅義偉官房長官を留任させる意向を明言した。一方で「予測可能」な人事が支持率上昇と求心力の回復に結びつくかはわからない。内閣改造でも「予測可能」がリスクになる恐れがある。(政治部次長 吉野直也)



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