真相深層 鹿児島知事、振り上げた拳 川内原発、近く一時停止要請 支持者には賛否両派 2016/08/25 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合1面にある「真相深層 鹿児島知事、振り上げた拳 川内原発、近く一時停止要請 支持者には賛否両派」です。





 鹿児島県の三反園訓知事が近く、川内原子力発電所の一時停止、関連施設や活断層などの点検・検証を九州電力に要請する方針だ。7月の知事選で掲げた公約だが、原発容認派の支持も受けており、原発政策のかじ取りは難しい。一方、九電も対応次第では自社の経営だけでなく、他の原発にも影響を与えかねず、新知事との関係づくりに頭を悩ませる。

三反園知事の支持層は幅広く、原発政策のかじ取りは難しい

法的権限はなく

 「周辺住民は不安に思っており、原発は事故を起こしてはいけない。だからこそ九電は一旦停止して再検証すべきだ」。三反園知事は19日、川内原発周辺を視察。避難道路や介護施設を見学し、住民らの意見も聞いた。

 これを参考に8月中にも一時停止を要請する考えだ。知事に原発を止める法的権限はないが「県民が不安に思っているのならトップとして申し入れるのが当然」と語る。

 三反園氏は元テレビ局のコメンテーターで伊藤祐一郎知事(当時)の4選阻止を掲げて立候補した。これまでの発言をみる限り、必ずしも原発の稼働に全面的に反対してきたわけではない。2月の政策発表時は「原発に頼らない社会を目指す」としながらも、川内原発については「再稼働しており、地域住民の安心安全をまず考えねばらならない」と賛否にまで踏み込んでいない。

 発言が変わった背景には2つの要因がある。1つは2度の震度7を観測した4月の熊本地震。その後、川内原発の調査・点検や避難計画の見直しなどを求める申し入れ書を県に提出している。

 もう1つが告示直前の政策合意だ。同選挙には反原発を掲げる平良行雄氏も出馬表明していた。現職に対抗するため候補者の一本化が必要と判断。平良氏が立候補を見送る代わりに、三反園氏は公約に「川内原発を停止して、施設の点検と避難計画の見直しを行う」「原子力問題検討委員会を県庁内に設置する」と盛り込んだ。

 前回(2012年)の知事選では別の反原発派の候補が約20万票を獲得している。このすべてが反原発票とは言い切れないが、決して小さくない数だ。7月の選挙で三反園氏が獲得したのが約42万6千票で伊藤氏との差は約8万4千票だった。

 ただ、多選批判などを訴え、保守も含む幅広い層から票を得ており、支持者には「原発容認派」もいる。知事本人から「原発問題は簡単ではない」との本音も漏れる。

 川内原発の周辺でも住民の見方は分かれる。無職女性は「原発の安全性の再検証は必要。事故発生時の避難も再度考えてほしい」と訴える。夫が原発作業員の主婦は「地元では原発関連の仕事をしている人も多く、稼働させないと経済的な負担が大きい」と指摘する。

玄海へ影響懸念

 対する九電は真意を探りたいが、「県職員が九電に接触するなといわれているもよう」(同社幹部)でパイプづくりに苦慮している。停止要請を簡単に受け入れにくい事情がある。仮に原発を停止すると、1基あたり月50億円の利益の押し下げ要因になる。そればかりか規制委が安全と判断した原発を電力会社の判断で止めた前例ができ、他社の原発再稼働に影響を与えかねない。九電自体も玄海原発(佐賀県)の今年度中の再稼働を目指しており、影響が及ぶことは避けたいところだ。

 実は川内原発は三反園氏の要請にかかわらず、13カ月に一度の定期検査で一時停止しなければならない。電気事業法で原発を運転する電力会社に義務付けているもので1号機は10月6日ごろ、2号機は12月16日ごろ始まる見通し。開始時期の前倒しの観測も出るが、要員の確保も難しく九電は現実的でないとする。

 焦点とみられるのが、同原発事故時の避難計画の見直しだ。三反園氏が選挙時から言及し、19日の視察でも、「避難道路の幅が狭く渋滞する懸念などがある。早急な対応が必要だ」と語っている。九電側も避難計画の見直しに「丁寧に協力する」(幹部)ことで理解を得たい構えだ。

 これまで九電は伊藤前知事との良好な関係に頼るところが大きかった。新知事とどういう関係を築くのか。「三反園氏は振り上げた拳が高すぎて落としどころが難しくなっている」との見方も出るなか、見えない着地点を探る作業になる。

(松尾哲司、栗本優、柏木凌真)



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