砂上の安心網 それぞれの責任(1) 高齢者優遇、限界で は? 政治の覚悟足りなかった厚労族の重鎮 尾辻秀久氏 2017/5/2 9 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「砂上の安心網 それぞれの責任(1) 高齢者優遇、限界では? 政治の覚悟足りなかった厚労族の重鎮 尾辻秀久氏」です。





 社会保障制度の改革はなぜ進まないのか。キーパーソンにそれぞれの責任を問う。初回は社会保障費の抑制は困難と主張してきた尾辻秀久元厚生労働相。

 ――日本の社会保障は限界が近づいています。高齢者優遇では持ちません。

 「どこが優遇しているのか。指摘は理解できない」

 ――社会保障費は高齢者に使われるものが多く、他の予算を圧迫しています。

■消費税を20%に

 「最大の問題は消費税率を引き上げないことだ。税率を20%に上げれば済む話だろう。欧州には消費税率が20%を超える国が多い。高齢化が進む日本が8%や10%でやれるはずがない」

 「社会保障の議論をするときには、まず国民負担率を議論すべきだと言ってきた。負担率を高くして、給付を手厚くすべきだ。自助、共助、公助のうち公助を一番大きくすべきだ」

 ――給付減などの取り組みなしに20%は国民的な合意になるのでしょうか。

 「覚悟を決めて言うしかない。戦後の日本政治は生産者米価は上げるが、消費者米価は下げるといってきた。社会保障も同じで、給付を充実させると言ってきた結果が今の財政赤字だ。戦後政治のツケが出ている。政治家の責任でもある」

 ――厚労相を務めた自身の責任も感じますか。

 「私も責任を感じている。今の社会保障は世界に引けを取らない制度になっている。それに見合う負担を求めてこなかったところに責任がある。もっと皆さんに税金を払ってもらわなければいけませんと、はっきり言うべきだった」

 ――なぜ公助を大きくすべきだと考えるのですか。

■助け合いの国

 「日本人は農耕民族で、田植えをするとなると隣近所で助け合ってきた。その文化は今でも生きており、助け合いを基本にすべきだ。農耕民族の文化でいくのが正しい」

 「政治のレベルで一番欠けているのが哲学の議論だ。日本をどういう国にするのか、基本のところを置いてきてしまった。日本を米国型の社会にすべきかということだ。そういう国にするなら、それはそれで一つの考え方だ」

 ――自民党は「子どもは家庭で育てるべきだ」との価値観が強く、子どもへの支援拡充は進みません。

 「自民党にはもともと『家』に対する考え方があったが、もはや時代が変わった。人々の親兄弟への感覚は変化しており、時代の流れに沿っていくべきだ」

 ――2000年代後半に社会保障費の抑制を「乾いたタオル」と例えました。今も同じ考えですか。

 「あのころは経済財政諮問会議が経済活性化のために社会保障費を毎年2200億円削れと言い続けた。それは基本的におかしく、削りようがない。乾いたタオルを絞るようなもので、今でも同じ認識だ」

 ――厚労族と言われています。日本医師会など支持団体への配慮があるのではないですか。

 「全くないとは言わない。私は当選以来ずっと弱い立場の味方をしている。業界の立場が弱いときは業界と同じことを言うことも多いが、医師会と大げんかをしたこともある。官僚制度と対峙するには議員の専門家集団が必要だ。族議員という表現を使うならば、それでよしと思っている」

■診療報酬の抜本見直し必要

 ――今年は診療報酬と介護報酬の同時改定の作業を控えます。

 「診療報酬をつくったとき、医者は薬代でもうけるような仕組みにした。日本人は技術料のような無形のものにお金を払うのは大嫌いで、薬を出すから薬代をもらいますというと文句は言わないからだ」

 「今になって『医者が薬でもうけるとは何だ』と批判がでている。だが、本当は薬代でもうけないと医者の取り分がなくなってしまう。抜本的に見直さないといけない。このままごまかしながらいくのは限界に来ている」

 ――規制改革推進会議が介護保険サービスと保険外とを組み合わせる「混合介護」の導入を打ち出しました。利用者の利便性を高めませんか。

 「混合介護という言葉が何をいっているのかさっぱり分からない。ヘルパーを指名して、指名料をとるなんて議論にも値しない」

 ――混合介護は先送りとなりました。

 「規制改革推進会議も言うことがなくなったのではないか。玉がなくなったので、くだらないことを言う。もうそろそろ店じまいした方がいい」

 ――自民党で「こども保険」の議論が活発になっています。

 「加入者が払った保険料が将来帰ってくるのが保険だ。子どもを産まない人からも保険料をとるのは保険とは言わない。みんなで助け合っていこうという基本理念は賛成するが、もうひと工夫してほしい」

 おつじ・ひでひさ 1971年(昭46年)東大中退。89年参院初当選。日本医師会とのパイプは太く、2004年に厚労相に就任。自民党厚労族の重鎮として国の政策決定に関わってきた。76歳。

<聞き手から> 税と社会保障、理念再構築を

 社会保障費の財源を賄うため将来は消費税率を20%に上げるという尾辻氏の提言は大胆だ。高齢者も含め国民全体で負担する消費税は公平性の観点から重要な財源になることは間違いない。だが2度にわたり増税を延期した安倍晋三首相が受け入れるとは思えない。

 日銀の異次元緩和で覆い隠されているようにみえるが、日本の財政は刻一刻と深刻さを増している。財政支出などを伴う公助に頼り切ることは難しく、自助や共助の領域を広げていかなければならない。

 尾辻氏は膨大な財政赤字を「戦後政治のツケ」と表現し、自身も含めた政治家の責任を率直に認めた。高齢社会を乗り切るために、政府・与党は早急に税と社会保障の理念を再構築し、負担だけでなく給付も同時に見直していく必要がある。強い政権基盤を持つ安倍政権にはその責務があるはずだ。(重田俊介)



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