砂上の安心網 ゆがむ分配(3) 年金「世代間」の盲点 高所得者を支えるナゼ 2017/2/19 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「砂上の安心網 ゆがむ分配(3) 年金「世代間」の盲点 高所得者を支えるナゼ」です。





 年金を10年近く取材してきた。高齢者がちょっぴり年金を我慢し、現役世代も少し負担を増やす。制度の長持ちにはそれが欠かせないと書いてきた。だが最近になってこう自問している。「世代間の支え合い」にこだわり過ぎたのではないだろうか。

高所得者の基礎年金支給を停止する法案は実現を前に白紙に

■支給は意識せず

 それなりに稼ぎがあるとにらんだ企業首脳に年金事情を聞いてみた。70代の男性2人が口を開いてくれた。

 鉄鋼メーカーのAさんの年収は4ケタに届く。しかし年金は「正直、いくらもらっているか分からない」。厚生年金は給料に応じて減るルールのためほぼゼロ。月6万円あまりの基礎年金は入っているはずだが、他の収入と口座が同じで意識しないらしい。

 自動車部品メーカーのBさんは年金をNPO法人に寄付している。「世間への恩返し」なのだそうだ。

 ここで、ふと考えた。年金が「高齢で収入が落ちたときの生活を支える保険」というなら、税金が半分入る基礎年金は所得が多い人には不要なのではないか。

 実はこの考え方、2012年に実現直前までいった。高所得者の基礎年金を減らし、低年金者の対策などに充てる案。似たような制度を取り入れているカナダでは払い戻しを意味する「クローバック」と呼ばれる。

 だがこの案は政権にいた旧民主と自民、公明の3党協議で関連法案から落ちた。当時、この協議に加わっていた自民党の鴨下一郎元環境相は「保険の根幹が崩れる。所得格差は税制で調整すべきだ」と考えたそうだ。

 もし実現していたら、どうだったろう。たとえば年収600万円超から基礎年金を減らし始め、年収1000万円超は全員半額をカットする。基礎年金をもらえる人のうち年収600万円超は40人に1人。この場合、2000億円近くの財源が出る。それなりの低年金対策ができる額だ。

 これはいわば高齢者の世代内での支え合いだ。そんな姿が見えれば、年金に不信感を持つ若者がもっと保険料を払ってくれるというのは甘い期待だろうか。

■免除のカラクリ

 でも、支え合いの礎になる保険料を巡っても首をかしげることがある。

 「保険料、免除できますよ」。東京都内で昨春、脱サラして飲食店を開いた森晃さん(仮名、36)は区役所でこう告げられた。お金の出入りが大きく、支払いを延期してもらおうと相談した時のこと。「住民税は分割で納めるのに、トクしたなあ」と帰ったそうだ。

 収入が低い場合、国民年金保険料は支払い免除になる。離職者も収入に関係なく免除になる特例があるのはあまり知られていない。

 点と点がつながってきた。保険料を集める日本年金機構が重視する納付率は免除者を分母から外せる。未納が免除に移れば見かけの数字は上がるカラクリだ。機構がしきりに免除制度をPRする理由を勘繰りたくなる。

 とかく難解な言葉が並ぶ年金の報道。誰に払い、誰から保険料を集めるか。そんなシンプルな問いかけをもっとしていこうと思う。



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