砂上の安心網 ゆがむ分配(4) 福祉の公器、絶てぬ腐敗 しが らみ・縦割り腰重く 2017/2/20 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「砂上の安心網 ゆがむ分配(4) 福祉の公器、絶てぬ腐敗 しがらみ・縦割り腰重く」です。





 77ページの「調査報告書」の中に、取材班が目を疑う記述があった。「社会福祉の書籍に偽装したアダルト商品を法人経費で支払った」

 東京や神奈川の保育園で昨年、計画中止や変更が相次いだ。ある社会福祉法人の不祥事が原因だった。

■法人を私物化

夢工房の法人本部が入る保育園(兵庫県芦屋市)

 「シャフク」と呼ばれる社会福祉法人(社福)。全国に約2万あり、税金を使って保育園や介護施設を運営する。そんな「福祉の公器」に何があったのか。

 事件の主役は兵庫県の社福「夢工房」。元理事長と親族が運営費約1億4千万円を不正に使ったと認定された。調査報告書では、私物化の実態が暴かれた。

 公用車と称して娘に高級車レクサスを買い、勤務実態のない親族に数千万円の給与を出す。しかも法人を監視する評議員に、元理事長本人や親族を置いていた。今、新理事長として再建を担う滝沢功治弁護士は言う。「不正を指摘されない仕組みにしていた」

 社福は公共性が強いため法人税は免除され補助金も受ける。だから法人財産は個人が持ち出せず、利益は福祉に再投資するのがルールだ。なのになぜ、不正流用に手を染めたのか。取材班は元理事長に話を聞こうとしたが会えなかった。

 社福改革が必要との声は強い。鈴木亘学習院大教授は「職員の処遇改善や、待機児童・高齢者の受け皿作りを進める努力が足りない」と語る。キヤノングローバル戦略研究所は、2014年度で社福全体の保有金融資産が約2兆円に達するとはじく。

 お金が全て不正にまわっているわけではない。ただ近畿地方の社福の理事長は「社福は9割が中小。やる気がなく金をためたままの法人も多い」と話す。

 国は4月、社福に「お目付け役」の会計監査人を置くことを義務づける。ためたお金を事業の充実などに充てることも求める。だが当面、会計監査人の義務づけは収益30億円超の法人などで全体のわずか1%だ。内部留保も実際にお金を使ったかは「原則、県や市が確認する」(厚生労働省)。自治体にできるのか。

■動かぬ指導役

 取材班は6日、神奈川県鎌倉市議会を訪ねた。社福のトラブルを調べる百条委員会が開かれていた。

 追及を受けたのは、同市が本部のラファエル会。福祉施設で職員を時給324円で宿直させ、死亡事故や経理ミスもあった。3日に辞任した元理事長は「鎌倉市の所轄ではないので回答を控える」と繰り返した。

 同会は複数の自治体に福祉施設を持つため、指導や監視役は神奈川県だ。だが県の担当者は「我々は疑いの段階で特別な監査はできない」と動かない。元理事長は不祥事の発生自体は認めているのに、だ。

 元理事長は現県議の事実上の後継として自民党鎌倉支部長の業務を継いだ経歴がある。そして同会には、鎌倉市や相模原市の職員が天下っている事実もある。

 社福と自治体の職員、地方議員の絡み合う人間関係。そして縦割り行政――。全国どこにでもありそうな構図に「変わらない予感」が漂っている。



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