砂上の安心網 不作為の果てに(2) 年金信頼回復の代償 免除多用で制度空洞化 2017/6/27 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「砂上の安心網 不作為の果てに(2) 年金信頼回復の代償 免除多用で制度空洞化」です。





 年金は政治の世界で「鬼門」ともいわれる。過去には年金不信の高まりで体力をすり減らした政権もあった。旧社会保険庁を解体して7年前に発足した日本年金機構。信頼を取り戻す「改革」を進めているというが、果たして本物なのか。

■納付率はアップ

年金機構は信頼回復のため納付率アップを目指すが…(東京都新宿区)

 取材班は機構を所管する厚生労働省を訪ねた。幹部が「信頼回復の証し」と胸を張った数字がある。

 63.4%。これは2015年度の国民年金の納付率だ。過去最低だった11年度の58.6%と比べると数字は「回復」している。しかし、ある政府関係者は気になることを言っていた。「まるで免除推進機構だ」。厚労省や機構がいう信頼回復にはやはり裏があった。

 国民年金の加入者は16年3月末時点で1668万人。このうち低所得を理由に保険料の支払いを免除された人の割合は34.5%を占める。5年間で6ポイント上昇し過去最高だ。納付率は免除者を分母から除くため、未納者が免除者に変われば数値は自然と上がる。

 免除者はたとえ保険料を40年間支払わなくても年39万円の年金がもらえる。機構の水島藤一郎理事長は取材班に対し、「(将来の)生活保護が減額できる」と、免除の意義を語った。

 やむなく保険料を払えない人を救う手段として免除制度が必要なことは理解できる。だが機構という組織を防衛するために使われているとすれば、評価は違ったものになる。

 ある年金事務所の職員が重い口を開いた。「数年前から免除者の獲得が明確な評価基準になっている」。機構は否定するが、必要のない人にも免除を勧めているのではないか。

■統一されぬ基準

 厚労省の02年の調査では所得がなくても42.5%の人が保険料を納めていた。ところが14年の調査ではこの割合が22.7%に低下。所得が少なくても資産を取り崩すなどしてやり繰りしていた人たちが払わない選択をした可能性が浮かぶ。

 免除者を含めた被保険者全体でみると、実際に納付された割合は15年度に40.7%と5年前より1.4ポイント低下。「信頼回復」の裏側で制度の空洞化が進む。機構の改革に企業も戸惑う。

 昨年10月、西日本の流通大手の総務担当者はぼうぜん自失となった。管轄の年金事務所がそれまで認めていた保険料の算出基準を突然変更したのだ。理由は東京の機構本部が拒んだから。過去に納付した分を修正し、約1.4億円の追徴納付を迫られた。

 各種の手当を報酬と賞与のどちらに算定するかで企業が負担する保険料は変わる。算定基準が地域で異なったため、機構は今年から全国統一のマニュアル作りを進めている。だが、いまだに算定基準の明文化された統一ルールが作れず、企業は翻弄される。

 「『生まれ変わった』と胸は張れない」。機構のある職員の言葉は、「100年安心」といわれる年金制度の担い手たちのいまだ安心できない実像を映し出す。



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です