砂上の安心網 支え合いの境界(3) 福祉大国就労重視の 土壌 支え手づくりに好循環 2017/4/26 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「砂上の安心網 支え合いの境界(3) 福祉大国就労重視の土壌 支え手づくりに好循環」です。





 福祉大国、スウェーデン。年金などの仕組みづくりで日本の手本とされる。支え合いの現場を知ろうと取材班は北欧へ飛んだ。

ビラーさんは息子の誕生に合わせて妻と同じ8カ月の休暇を取った

 「毎日3時間半のペースで平均寿命が延びている」。首都ストックホルムで会った社会保障担当副大臣のテレセ・アンダーソンさんが挙げた数字が印象的だった。1年に50日、7年ごとに1歳延びる計算だ。

■働く人に手厚く

 スウェーデンは21世紀に入って退職の基準年齢を65歳から67歳に引き上げたが、アンダーソンさんは「まだ足りない」と言い切る。「70歳現役社会」が視野に入っているようだ。

 福祉大国という言葉は優しさをイメージさせる。だけど現実は甘くはない。高齢社会では1人でも多くの人が長く働き続けるしかない。そんな当たり前の答えがとっくに出ている。

 働き方改革がブームになっている感もある今の日本。長時間労働の是正や同一労働同一賃金の必要性を否定するつもりはない。しかしスウェーデンでみえたのは議論の土台の違いだ。

 「いつ解雇されるかわからない不安定な職場はもう嫌だ」。13年勤めた携帯電話の修理業をリストラされたダニエル・サンドさん(35)は3月下旬、今までの職歴と全く異なる職業人生を自分の力で切り開こうとしていた。

 サンドさんに手を差し伸べているのは「TRR」と呼ばれるスウェーデン特有の職業あっせん組織。不況で失業者があふれた1970年代に経済界と労働組合が協力して立ち上げた。

 企業の調達部門を再就職先と定めたサンドさんは知識やノウハウを5カ月かけて習得。「今後の調達業は中国への理解がカギを握る」と考え、貯蓄を取り崩して北京へ留学もした。

 失業者にも様々なサポートが用意されているから、企業は解雇を含む経営判断をためらわずに済む。ただし手を差し伸べるのは失業状態から抜け出す意欲のある人だけ。支え合いの基準はとってもドライだ。

■男女平等も徹底

 老若男女の働く力をあまさず引き出そうとするスウェーデン。安倍晋三政権が打ち出した「一億総活躍社会」と描く姿は似ているが、実態はかなり違うようにみえた。男女平等の徹底ぶりにも彼我の差がある。

 自国情報を発信するスウェーデン文化交流協会のマネジャー、クリスチャン・ビラーさん(41)は2児の父。第1子が生まれた5年前、公務員の妻ヘリアンさん(37)と入れ替わりで育児休暇に入った。「休暇は妻と同じ8カ月。同じ期間ずつ休むと特典がある」とビラーさん。夫婦が当然のように子育ての負担を分かち合う土壌が母親の職場復帰のハードルを下げる。

 子育てや人材育成にこそ手厚いのが成長を重視するスウェーデン流の安心網。その優先順位は支え合いの境界に悩む我々への示唆に富む。



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