砂上の安心網 支え合いの境界(4) 改革進まぬ年金の錯 誤 世代の不公平、置き去り 2017/4/27 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「砂上の安心網 支え合いの境界(4) 改革進まぬ年金の錯誤 世代の不公平、置き去り」です。





 厚生労働省の官僚や厚労族議員からよく聞く言葉がある。「年金はフタが閉まっているから安心だ」。高齢化による費用拡大が読めない医療や介護と比べ、支給抑制の仕組みもある年金は改革の緊急性が低いという意味だ。だがこの「安心」は私たちが想像する「安心」とはわけが違う。

税方式を柱にした年金改革案は40年前に提案されていた

■「どうせ損する」

 「どうせ俺たちは損するんだろ」。最近、東京都内の年金事務所の職員が40代の中小企業の経営者から罵声を浴びた。この企業に年金保険料の支払いを促したときのことだ。日本年金機構の幹部は「経営難の中小企業の感情論だ」と語る。本当にそれで片付けていいのか。

 一生涯でもらえる年金や医療、介護のサービスと、支払う保険料(労使合計)や税の収支を小黒一正法政大教授が試算したところ、60歳以上では約4千万円の黒字だが、40代以下では支払いの方が多くなる。特に年金の比率は大きい。

 「福祉元年」の1973年当時、厚生年金の保険料率は今より10ポイント以上低く、高齢世代が払った保険料は少ない。年金額抑制で現役世代はますます不利になる。中小企業の感情論は的外れとはいえない。

 ところが高齢者がみな裕福というわけでもない。千葉県佐倉市に単身で住む河野健三さん(71、仮名)は「40年近く保険料を払ったのに何で生活保護に陥るんだ」と憤る。理由はずっと自営業で、国民年金にしか入っていないからだ。

 貯金しなかった河野さんにも責任はある。ただ厚労省に言い分を聞くと「月6万5千円の給付では基礎的な生活費を全部賄えない」と認めた。保険料をほぼ満額払っても生活がままならない現実。しかも20年後には高齢者の一人暮らしは2割に増える。

 閉まっているはずの「フタ」は年金財政全体のこと。保険料を支払った全員の安心を意味しない。安心の線引きから外れる人たちの老後と向き合うときがやがて訪れる。

 「負担能力に応じた保険料になっていない」。経済産業省は3月の有識者会議で指摘した。短時間労働、副業・兼業、フリーランス……。企業に属さない働き手が増えているのに、高所得者が月1万6490円の国民年金保険料で済んだり、そもそも払っていなかったりする例も多い。

■所得比例に糸口

 世代間の不公平を温存し、働き方の多様化にも追いつけない日本の年金制度。解決の糸口はあるのか。

 「税財源による全国民共通の基本年金に加え、職業に関係なく所得比例の年金をつくる」。最低限の暮らしを守る年金を税で賄い、その上に自営業者も会社員も所得比例の年金を加える。現役時代の自助の余地を広げ、高齢者も消費税などで負担を分かち合う。

 2000年代に浮上した改革案だが、実は40年前に似た案を政府の審議会が提案していた。財源問題などが壁になりお蔵入りとなった。長く欠陥を意識しながら、老後の支え合いの線引きは絡み合ったままだ。



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