砂上の安心網 線引きに惑う(3)迫る限界 苦悩は同じ 20 17/4/26 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「砂上の安心網 線引きに惑う(3)迫る限界 苦悩は同じ」です。





 北欧の福祉大国スウェーデンは地方分権が進み、自治体が社会保障の主役になっている。首都ストックホルムから特急列車で約2時間。15万人余りが暮らす代表的な地方都市、リンショーピンで行政の現場を歩いた。

高齢者にITを覚えてもらうのがロビンさん(右)の仕事だ

 市中心部の日当たり良い黄色い建物をのぞくと高齢者が10人ほど集まっていた。そこは市営の「シニアセンター」。近所の高齢者が好きなときにやってきて、仲間とのおしゃべりやゲームに興じて帰宅する。福祉の国らしいサービス員付き無料サロンといった雰囲気だ。老人たちが記者(41)に気さくに話しかけてきた。

 朝から夕方までセンターで働いているという車いすのロビンさん(30)は「IT(情報技術)が得意です」と自己紹介してくれた。タブレット端末で高齢者と遊び、認知症などを防ぐ大事な役割だ。障害を持ちながら貢献するロビンさんを取り上げた新聞記事が部屋に張り出してあった。

 福祉の現場での働き手確保は日本と同様に大きな課題。「厚遇されるノルウェーへ看護師が行ってしまう」とリンショーピン大学病院のアンダーソン前医務部長は話す。だからといって簡単に賃上げに踏み切れないから悩ましいのだという。

 市役所ではアンドレアスさんとジュシーさんの職員2人が社会保障政策へのボランティア活用に頭をひねっていた。スウェーデンは難民に優しい「寛容の国」と呼ばれる。「増える難民の暮らしをどう保障するかが重要」と2人は口をそろえた。窓口で中東出身職員が移民らしき子連れ女性に耳を傾けていた。

 現場の工夫も限界は近い。「我々に残された時間はあと5年しかない」。市議会の社会保障政策にたずさわるサンフリドソン議員に会うと真剣に語りかけてきた。2022年に80歳以上の住民が急増し、24年には90歳以上が跳ね上がる。その結果、医療・介護費は膨らむと予想される。規模の違いはあるものの、日本と同じ苦悩を見た。

 教科書通りの高負担・高福祉なら、給付が増えるのに応じて税金や保険料を増やすのだろう。しかし、議員は「住民税増税は考えていない」ときっぱり。「福祉サービスの重複やコストを点検し、見直していく」と給付抑制を力説した。

 消費税率25%の国で聞いた給付抑制の心構え。日本は税率8%から10%に上げる見返りだと社会保障の充実に走るが、そんな余裕はあるのか。改めて疑問に思った。

(上杉素直)



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