砂上の安心網 革新との遭遇(2) カプセル内視鏡飲んで みた 検査しながら日常生活 2017/10/11 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の経済面にある「砂上の安心網 革新との遭遇(2) カプセル内視鏡飲んでみた 検査しながら日常生活」です。





 「膵臓(すいぞう)に腫瘍があります」。昨年11月、人間ドックを受けた記者(25)は目の前が真っ暗になった。まだ入社2年目。磁気共鳴画像装置(MRI)やコンピューター断層撮影装置(CT)といった精密検査を受けた。5月に開腹手術をし、痛みや吐き気に悩まされたが、幸い腫瘍は良性で今は術前と同じように働いている。

■自分で腸内観察

カプセル内視鏡は簡単に飲み込める

 手術はもちろん、術前の内視鏡検査は麻酔をしても苦しかった。ところが、飲み込むだけで済むカプセル型の内視鏡があるという。今まで検査しづらかった小腸を見ることができ、飲み込んだ後は日常生活ができるらしい。

 実際に検査を受けてみた。東京大学医学部付属病院(東京・文京)では小腸の疾患を対象に、年150~200件ほどカプセル内視鏡を使った検査をしている。検査室には大きなモニターや細長い内視鏡がずらりと並ぶ。しかし、消化器内科の山田篤生医師(42)は「使うのはカプセルとレコーダーのみです」という。

撮影データはレコーダーで確認できる(東京都文京区の東大病院)

 口から飲み込んだカプセルが消化管内を撮影する。その場で撮った写真を無線で送り、腹部につけた受信機を経てレコーダーに保存する仕組みだ。

 「消化管内の空気を消す水で飲んでください」と言われ、渡されたのは指でつまめるほどのカプセル。片側にカメラがついており、長さは26.2ミリメートル、直径は11.4ミリメートル。うっかり滑らせて落としてしまわないか心配になる。最初こそ冷たい感覚が喉にひっかかったものの、すぐ食道を経て胃の中へ流れていった。

 飲み込んだ後はどこにあるのか意識できない。肩掛けのレコーダーで数秒前に撮影した画像を確認できる。初めて見た自分の消化器は思いの外きれいだった。すぐに帰社して「これが胃で、これは小腸です」と同僚に見せて回った。

■処置はできない

 通常の内視鏡検査では医師がリアルタイムで映像を確認する。今回使用したカプセルの場合、腸内をめぐる6~8時間の間に約6万枚の画像を撮りためてから解析する。そのため異常があるか判断するまでに時間がかかる。

 しかし、内視鏡の挿入のように技術は求められないため「解析にかかる30分を差し引いても医師の負担は少ない」(山田氏)。別のカプセルメーカーのオリンパスにも話を聞いてみたところ、出血部分がより赤く見えるように画像を自動で処理し、解析を手助けする工夫をしているという。

 患者の体に優しく、医師の負担も少ない。そんな夢のような検査だが、通常の内視鏡のようにその場で止血などの処置をすることができない。医師が直接確認しないと病変も発見できないため、今後は「人工知能(AI)を活用して画像を選別できるようにする予定」(オリンパス)という。

 入院や手術、復帰後の仕事……。大病を患うと乗り越えなければならない壁が次々現れる。この先、カプセルで投薬や処置ができるようになれば、治療のハードルは低くなる。存在すら感じさせない小さなカプセルがたくさんのことを告げていた。

(渡部加奈子)



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