砂上の安心網 2030年不都合な未来(5) 生活保護、 安住の温床「働く」前提の仕組み欠く 2016/12/24 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「砂上の安心網 2030年不都合な未来(5) 生活保護、安住の温床「働く」前提の仕組み欠く」です。





 最近、全国の自治体窓口で「はやり」があると聞いた。別々の場所にあった生活保護の受付と職業あっせんの窓口を近接させ、生活保護受給者をまずはハローワークに連れて行く。厚生労働省が旗を振った。

接客する田村準起さん(中)(北海道当別町の北海道医療大学ダブルトールカフェ)

 北海道釧路市では2015年10月から福祉事務所内にハローワークの出張所を設置。ケースワーカーや就労支援員が仕事を探す人と一緒に労働条件を考えられるようになった。15年度に生活保護から抜け出した人は717人。ここ10年で最も多かったという。

 「効果的だった」。同様の仕組みを入れた他の自治体の担当者も言っていた。

 でも、と考えてしまう。これって当たり前のことではないの? 生活保護から脱するには働いて給料を得るのが近道のはず。関東のケースワーカーは「『仕事を見つけてきてくださいね』と言うのが一昔前の就労支援」と教えてくれた。

54万の潜在力

 15年度の生活保護世帯は160万強。世帯主が65歳未満なのは約74万だった。このうち約54万世帯は働いて収入を得ている人が誰もいない。様々な事情で働きたくても働けない人がいる。弱者を支えるのが安心網の重要な役割だ。しかし見方によっては約54万人の「潜在就業者」がいると捉えることもできそうだ。

 取材班の推計では団塊の世代が80代になる30年には65歳以上の高齢者1人を1.65人で支えることになる。現役世代の負担は増すばかりだ。支えられる側から支える側へ、1人でも多くの人が回らないと社会保障は立ちゆかなくなる。

意思があれば

 「スウェーデンは生活保護は極力やらない。働かない人はサポートを受けないという基本理念がある」。日本総合研究所の湯元健治副理事長(59)の解説だ。福祉国家、スウェーデン。実は経済の活力を損なわないように社会保障給付の一部を厳しく制限する。働くことを前提とする姿勢は「ワーク・ファースト・プリンシプル」(勤労第一主義)と呼ばれるそうだ。

 失業期間が長くなるほど失業保険はどんどん減る。働かない人は老後の備えも細ってしまう。その代わり、働く意思がある人は国が徹底的に背中を押す。

 北欧流と重なる試みがあると聞いて北海道当別町を訪ねた。北海道医療大学構内のカフェ。泡立てたミルクで絵を描くラテアートで人気の東京・渋谷のカフェが社会福祉法人とともに出店した。「好きな絵でお客さんが喜ぶのがうれしい」。ラテアート担当の田村準起さん(30)は知的障害を持つが、小さな頃から絵が得意。掃除をするのも会議室にコーヒーを運ぶのも障害を持つ従業員だ。

 生まれる子どもの数が減り続け、将来の支え手が細る一方の日本。高齢者も障害を持つ人もできる範囲で支える側に回れば、社会保障の未来は少し違った景色になる。

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