私見卓見 日本の観光モデル 五輪までに確立観光庁長官 田村明比古 2017/10/27 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の経済教室面にある「私見卓見 日本の観光モデル 五輪までに確立観光庁長官 田村明比古」です。





 2020年の東京五輪・パラリンピックまで28日であと千日となる。政府は20年に4千万人の訪日外国人客を誘致し、旅行消費額も現在の約2倍の8兆円に増やす目標を掲げた。達成できれば日本経済に60兆円の波及効果があり、550万人の雇用創出を見込める。官民あげて取り組めば不可能な目標ではないが、それには日本の観光業のビジネスモデルをしっかりと確立することが喫緊の課題である。

 国内の観光産業は主に日本人を対象にし、世界のなかで競争してこなかった歴史がある。政府がアジア諸国を対象に戦略的なビザ緩和を順次実施したことでここに来て訪日客数が高い伸びを示しているものの、まだ産業自体が未成熟で、ようやく国際競争のスタート地点に立った状況だ。従来の観光の中心だった宿泊業と観光地全体が変わらないといけない。

 16年の全国の旅館稼働率は平均37%にすぎない。世界的に見ると日本の旅館は特殊なサービス形態にあたるためだ。今までは団体客に目を向け、週末に1泊で過ごす需要を取り込んできたが、世界の市場では連泊でゆっくりとくつろぎ、ファミリーでも楽しめる観光が重要だ。サービスを定義し直す必要がある。最近は中国からの訪日客も半数以上を個人客が占める。自分にしかできない体験を求めて旅行に来ており、そのニーズに対応しなければならない。

 長く心地よく過ごしてもらうためには、超高級からマス(大衆)まで幅広い品ぞろえが大切になる。日本は価格をあげる技術に乏しく、現在は高価格帯の観光商品が少ない。例えば、ヨーロッパではワインを1つとっても、1本数百円から数十万円までのおいしいものがたくさんある。日本も宿泊施設、食、工芸品、体験メニューなどで多様性を高めるべきだ。

 今の訪日客の1人あたり消費額は約15万円だが、長く過ごしてもらうことが目標の20万円達成に必要だ。1つの市町村や県単位でビジネスを考えがちだったが、行政区域の壁を取り払い広域的に目的地をとらえることも重要だ。今年度から日本に無関心な層を対象にした欧米向け観光キャンペーンも予定している。

 大切なのは20年の五輪後だ。30年には日本の人口が6%減る。一定の経済成長力を確保するには、伸長している観光業が担う役割がより大きくなる。30年を見据える上でも、20年の五輪を機に観光先進国の基盤をつくりたい。



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