秩序自ら破壊しっぺ返しも 2018/3/24 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「秩序自ら破壊しっぺ返しも」です。





 「1940年代に米国が同盟国とともに国際経済システムを創設して以降に、米国がとった最も危険な措置だ」

 米有力シンクタンク、ピーターソン国際経済研究所のアダム・ポーゼン所長は、トランプ米政権の一連の保護貿易措置についてこう警告する。

 米国は第2次大戦終結直前の1944年に、ブレトンウッズ体制と呼ばれる国際経済システムをつくりあげた。

 金融は国際通貨基金(IMF)・世界銀行、貿易は世界貿易機関(WTO)の前身の関税貿易一般協定(GATT)という国際機関を中心に問題に対処する仕組みだ。

 戦前の英国に代わって基軸通貨国になった米国が主導する経済体制は、東西冷戦下で西側の資本主義陣営をまとめ、ソ連主導の共産圏に対抗する中核にもなった。それから70年余り、90年代初頭の冷戦終結後も、米主導のシステムは存続し、経済のグローバル化のエンジンになった。

 その象徴的な出来事が、2001年の中国のWTO加盟だ。これを契機に中国はグローバル化の波に乗り高成長路線をひた走った。IMFや世銀は旧東欧・ソ連をはじめ新興国に資金を流し成長を支えた。

 この間も米国は保護主義や一方的措置に走ることはあった。金とドルの交換を突然停止し為替相場の変動制移行につながった71年のニクソン・ショック。日本製スーパーコンピューターへの通商法301条発動など80~90年代の日米貿易摩擦。

 米政策の振り子は時折振れたものの、「ワシントン・コンセンサス」と呼ばれたグローバル協調体制を米国が自ら崩すような暴挙に出たことはなかった。

 トランプ政権内の対中強硬派には、歴代米政権は中国を世界経済に取り込む関与政策をとったが、民主化は進まず経済成長のいいとこどりをされたという反省がある。独裁体制下で経済大国となった中国は、一帯一路など「ベイジン(北京)・コンセンサス」とも言える自国主導の構想で米国に対抗し始めた。

 トランプ大統領が標榜する「米国第一主義」は、国際協調体制とは一線を画し、なりふりかまわず一方的な自国優先の政策に走るという意味だということがはっきりした。

 コーン米国家経済会議(NEC)委員長、ティラーソン国務長官ら国際協調にとどまるよう主張してきたグローバリストも相次いで政権を去って行った。

 1929年の米株価暴落に端を発した世界大恐慌。景気悪化を深刻にした一因は、30年に米国が制定したスムート・ホーレイ関税法をきっかけとした関税引き上げ競争にあるとされる。

 23日、米国の鉄・アルミニウム輸入制限への対抗措置として中国は豚肉などへの最高25%の対抗関税を準備すると発表した。もう「貿易戦争」は始まったのだ。

 貿易戦争が通貨戦争に飛び火する懸念もある。23日の東京市場で、円相場は一時1年4カ月ぶりの高値をつけ、株価も世界で急落した。

 グローバル経済の潤滑油は、ヒト、モノ、カネの自由な流れだ。トランプ政権は移民制限でヒトを、関税引き上げでモノの流れを制限しようとした。これでカネの流れまで収縮すれば、世界経済への影響は深刻になる。

 内外から発せられる懸念を無視して強硬措置に踏み切った米国。大統領の頭は、11月の米中間選挙に向けた支持者つなぎとめでいっぱいなのだろうが、市場の混乱や実体経済の悪化で手痛いしっぺ返しにあうリスクは考えていないのだろうか。(編集委員 藤井彰夫)



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