税金考 気になる光景(1)それぞれの反乱 富裕層増税 もろ刃の剣 2015/07/26 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の1面にある「税金考 気になる光景(1)それぞれの反乱 富裕層増税 もろ刃の剣」です。





 「お孫さんを養子にとられたらどうでしょう」。東京近郊に住む80代の女性は知り合いの税理士のこんな提案に面食らった。

 女性が保有する1500坪の土地の評価額は約33億円。50代の長男と長女が負担する相続税は計18億円に上り、払い切れない分は代々受け継いできた土地の売却か物納を迫られる。

 長男とその息子(22)が「親子」から「兄弟」に変わる養子縁組が成立すれば法定相続人が1人増え基礎控除が増える。節税効果は約7500万円。家族のかたちを変える養子縁組届を出す方向が今春固まった。

国境越える反発

 政府が富裕層の増税を相次ぎ打ち出している。50%だった相続税の最高税率は1月から世界最高水準の55%に。所得税の最高税率も40%から45%に上がった。

 反発は国境を越える。「もう日本にはいられない」。10億円の資産を持つ都内の元税理士(56)は近く日本を脱出する。移住先は富裕層を税優遇するマレーシア。クアラルンプールに約8千万円で豪華なマンションを購入し夫婦で暮らす。

 日本は株式などの売却益に2割課税するが、マレーシア、シンガポール、ニュージーランド、香港はゼロ。相続税もかからない。この4カ国・地域に永住する日本人は1万4千人となり10年で2倍近くに増えた。

 世界が羨む長寿社会を実現した日本。その維持費用もかさみ国の借金は年30兆円ペースで増えている。懐に余裕のあるお金持ちにもう少し負担してもらわないと財政が回らない。富裕層増税はその一手だが、行き過ぎると副作用がある。

 2012年に発足した仏オランド政権は年100万ユーロ(約1億3500万円)超の所得に75%の高税率を課すと決めたものの、富裕層が猛反発し2年間の時限措置に修正した。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンの最高経営責任者がベルギー国籍を申請。人気俳優のジェラール・ドパルデュー氏がロシアの市民権を取得するなど頭脳や才能の流出が深刻になったためだ。

 高福祉高負担で知られるスウェーデンは04年、相続税を廃止した。富裕層の国外脱出が進めば国内消費が停滞し景気にも悪影響が出る。富裕税を減らし国内にとどまってもらうしかない。苦悩の末の選択だった。

日本も出国税

 グローバル化の進展で企業が国を選ぶようになったこの30年、欧州を震源地とする法人税率の引き下げ競争が世界に広がった。富裕税を巡る欧州の攻防は、国を選ぶ個人が増えるなかで相続税や所得税の下げ圧力がじわじわ強まっていることを示す。日本が無縁でいられるとは限らない。

 日本政府は7月から1億円超の有価証券を保有する人が海外移住する際、株式の含み益などに課税する出国税を導入した。吉と出るだろうか。08年に出国税を導入した米国では「国外離脱者が3倍に増えた。一定のお金さえ払えば恥ずべき行為ではなくなったためだ」(ルーベン・アビヨナーミシガン大教授)と言う。

 日常の風景に溶け込んだ税金を巡る攻防。その底流を現場から探ってみたい。

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