税金考 気になる光景(2)ビール20年戦争 技術革新、世界とズレ 2015/07/27 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の1面にある「税金考 気になる光景(2)ビール20年戦争 技術革新、世界とズレ」です。





 「こんな泥沼の展開になるとは思わなかった」。6月下旬。東京都内で暮らすサントリー(現サントリーホールディングス)元幹部(74)は、ビール業界と国税庁の20年にわたる戦いについてこう漏らした。

 20年戦争の発端は、サントリーが1994年に発売した初の発泡酒「ホップス」だ。当時、ビールは1缶(350ミリリットル)225円だったが、ホップスは2割安い180円で売り出した。

ドイツの17倍

 サントリー食品インターナショナルの北川広一執行役員(56)は振り返る。「ビールを飲んだ後、焼酎にする人が多い。よくよく聞くと、ビールは高いとの答えが多かった」。麦芽比率を65%に抑えたことでホップスは税法上ビールでなくなり税金も安くなった。折しも、80年代後半のバブル経済の熱狂が冷め企業倒産がじわじわ増えていた。安くキレの良い味は消費者をつかみ爆発的に売れた。

 あれから約20年。混迷は深い。サッポロビールは6月22日、同社の「極ゼロ」が税金の安い第三のビールではないとした国税当局に異議を表明。115億円の税金返還を求めた。

 ビール税戦争が長引くのは税金が重いためだ。販売価格に占める税金は46.6%。ビールの税率はドイツの17倍だ。戦費調達のため日露戦争直前にぜいたく品として課税した慣習が、ビールが庶民の飲み物になった今も残る。税金が重いほど技術革新で対抗する企業の取り組みも増える。

海外展開で後手

 勝者はだれだろう。

 少なくとも国税当局ではない。94年度に2兆円超だったお酒の税収は20年で約4割減った。この先も税収は減りそうだ。

 「まだまだ伸びる」。キリンビールの担当者が胸を張るのはノンアルコールビール。同社は09年国内初のノンアルコールビール「キリンフリー」を発売。飲酒運転への法規制強化を追い風に幅広い支持を得た。

 ノンアルコールビールはお酒ではないので、酒税はかからない。その割にビールに近い価格で売れる。酒税のくびきから逃れ利益も大きい市場に各社が雪崩を打って参入。サントリーによると、15年の市場規模は08年の14倍になる。

 ビール大手も勝者といえない。約20年前、キリンビールの株式時価総額は蘭ハイネケンの2倍近かったが今や3割程度にとどまる。最大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ベルギー)は6月末時点で約24兆円。日本勢はキリン、アサヒ、サッポロの上場3社合計でも4兆円足らずだ。

 国内市場の縮小はわかっていたのに新興国を軸とするグローバル市場の争奪戦で後手を踏んだ。野村証券の藤原悟史アナリスト(35)は「世界で通用しない酒税法対策の技術革新に気をとられすぎた」と見る。

 政府・与党内ではビールの税率を下げる一方、発泡酒や第三のビールの税率を上げて一本化する案が浮上する。今度こそ技術革新をゆがめない中立な税制をつくれなければ、20年戦争は税が生んだ勝者なき戦いとして歴史に刻まれてしまう。



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です