税金考 気になる光景(3) 過熱ふるさと納税 寄付なのにもうかる 2015/07/29 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の1面にある「税金考 気になる光景(3) 過熱ふるさと納税 寄付なのにもうかる」です。





 東京都港区に住む金森重樹さん(45)の自宅の冷蔵庫は全国の特産品でいっぱいだ。紋別の毛ガニから丹波の黒豆まで。食材が毎日全国から届く。

 「食費はただ。毎日の食卓は外食よりぜいたく」。こう語る金森さんが使うのはふるさと納税だ。例えば、自治体に10万円寄付すると2千円の手数料を除いた9万8000円を本来払うべき税額から減らせる。自治体から送られてくる返礼分はまるまる得する。

住民税の4倍

 ふるさと納税が今、過熱気味だ。北海道上士幌町は20万円の寄付に「羊牧場の仔羊」1頭を届ける返礼を出しネット上で評判を呼んだ。2014年度の寄付額は町の個人住民税収の約4倍にあたる10億円弱に膨らんだ。全国の自治体では寄付を集めようと返礼品を豪華にする競争が続く。

 08年に始まったふるさと納税による寄付金額は6年間で合計1126億円。各地の自治体と納税者の新たな関係を育み地域の活性化を促した。その新たな息吹を地方の再生につなげられれば良いと思うがどうも様子がおかしい。

 寄付はもともと公益のために私財を投じる行為だ。寄付金を所得から差し引く「寄付金税制」を使えば税負担は軽くなるが寄付したお金と合計すると結局は手取り収入は減る。

 だが、ふるさと納税でざっと200カ所に約300万円を寄付する金森さんの場合、返礼分を入れると手取り収入が実質的に増える。納税すると財布が豊かになる奇妙な仕組みだ。

 ふるさと納税の過熱は新たな段階に入りつつある。

タコが足を食う

 「とられてばかりじゃダメだ」。愛知県小牧市の山下史守朗市長(40)は6月、ふるさと納税で他の自治体に税収が奪われないよう異例の取り組みを指示した。小牧市民が小牧市にふるさと納税をしてくれるよう返礼メニューを作った。1万円を寄付した市民は小牧市内で使える3000円分の商品券がもらえる。

 実は市民から寄付を受けると返礼品を送っても市財政は潤う。寄付に応じて減る税収分は、国の所得税、愛知県の県民税と小牧市の市税で分担するためだ。1万円の寄付に伴う市税の減収分は3840円。寄付収入の1万円から市税の減少分と3000円の返礼代、1000円の郵送料を引くと、2160円の黒字だ。

 国からの仕送りである地方交付税交付金を受け取る自治体の場合、黒字はさらに膨らむ。地方交付税法は税収が減ると交付金で国が補填する仕組みをもうけているためだ。

 「市民が1万円寄付すると、交付金の支給額が7500円増えることになる」(片山善博慶大教授)。山口県のある市長は昨年末、市に寄付するよう職員に指示を出した。補填の原資は国民が納めた税金。たこが足を食うような話だ。

 約1億2600万人の日本の人口はこれから半世紀でざっと4000万人減る。厳しい時代を乗り切るためには、ふるさと納税の熱気をテコに国から地方への権限・税源の移譲や自治体の再々編に取り組む時期のように思えるが……。

お得すぎる寄付 富裕層「食費タダ」も

 ふるさと納税は地方自治体に寄付をすると手数料の2千円を除く寄付額すべてを税金から減らせる。さらに自治体から特産品などの返礼品がもらえ、その分が丸々、お得になる。寄付額は年収ごとに上限が設けられており、富裕層ほどふるさと納税の減税効果が大きい。

 限度額は年収が300万円の人の場合、3万1000円。一方、1千万円では18万8000円、3千万円では106万2000円まで跳ね上がる。一時は「還元率100%」と称し、寄付額と同等の価値のある返礼を出す自治体もあった。

 自治体にとっても富裕層から寄付を受けられるかで寄付額の差が大きくなるため、競争は過激だ。北海道当別町では100万円の寄付に「高級オーダー家具」を、鹿児島県鹿屋市は「特産品1年分」を用意している。100万円以上の寄付ができる年収3000万円以上の人はふるさと納税を利用すれば、1年間の食費がただになる可能性がある。

 関西学院大の小西砂千夫教授は「ふるさと納税が寄付の趣旨から逸脱しお得感を求める制度になってしまっている以上、段階的な見直しは避けられない」と指摘する。お金持ちの減税効果が極端に大きい仕組みも含め改善の余地がある。



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