税金考 気になる光景(5)マイナンバーの忘れ物 行政改革骨抜き懸念 2015/08/03 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の1面にある「税金考 気になる光景(5)マイナンバーの忘れ物 行政改革骨抜き懸念」です。





 住宅地図にも載っていない関東近郊のビルの一室。厳しいセキュリティーチェックをくぐり抜けた扉の向こうで、システムエンジニアがずらりと並ぶコンピューターと向き合っている。

年末の税務書類もマイナンバーを記載するようになる

 「残り半年。気を引き締めて備えたい」。国税庁の担当者が語ったのは来年1月の社会保障と税の共通番号(マイナンバー)導入に合わせ、国税庁と自治体の納税者情報を接続するシステム作りだ。

徴税強化2400億円

 これまでは氏名や住所を頼りに確定申告書や配当の支払い調書を個別に集めていたが、マイナンバーの入力だけで瞬時に全容をつかめるようになる。浮いた2千人の職員を税金滞納の対策強化に回す結果、税収が2400億円増えると政府は試算している。

 マイナンバー制度の源流をたどると、政府が1970年代から検討を始めた納税者番号制度に行き着く。会社員は所得情報の9割を税当局に把握されているのに自営業者は6割、農家は4割にすぎない。クロヨンと呼ばれた課税の不公平を解消し徴税を強化する手段として検討が始まったが、金融情報を国が管理する仕組みへの反発から、国会での審議は難航した。

 導入の検討を始めてから約40年。徴税強化に向けた作業が進む一方でマイナンバーを行政改革につなげる機運はしぼんでいる。

 「計画が棚上げならマイナンバー導入の意味が薄れる」。マイナンバー研究の第一人者、榎並利博富士通総研主席研究員(57)が憤っている。

 計画とは企業に割り振る13桁の企業版マイナンバーを使い、融資契約時や補助金申請に必要な登記や納税の証明書を簡単に取得できるようにする構想だ。政府は昨夏の成長戦略でこの計画について「法人ポータルを構築し2017年から開始する」と明記したが、今年6月にまとめた新たな成長戦略からは抜け落ちた。

省庁で反対続出

 政府関係者は「法務省が反対している」と指摘する。登記事項証明書は企業間取引だけで年7086万件使われ、法人ポータルができれば1件あたり337円の手数料がゼロになる。法務省から受託して証明書の発行事務を担う一般財団法人、民事法務協会の約16億円の手数料収入がなくなる。法務省に尋ねると「法人ポータル計画をはっきり知らない」(民事局商事課の担当官)の一点張りだった。

 行政改革の機運が衰えた背景には、国税庁が手掛ける徴税と日本年金機構(旧社会保険庁)が担う社会保険料徴収を一体化する歳入庁構想の停滞がある。

 民主党政権末期の12年夏。政府はマイナンバー導入を前提に歳入庁構想の「本格作業に着手する」としたが財務省や厚生労働省が反発。安倍政権発足後に棚上げになった。これを見た他省庁が「ウチも無関係との声を強めた」(関係者)。

 マイナンバーを活用し納税者の預金残高もつかめるようにしたい。政府はこう考え、今国会に提出した法案に18年度から銀行口座開設時に任意でマイナンバーを記入する枠組みを盛り込んだ。所得と資産の一体把握を進め、数億円の金融資産を持つ高齢者の税優遇を縮小し若者や子育て世代に回しやすくする狙いだ。

 政府が行政改革に背を向ければ、国による金融情報の管理への反発が再燃するだろう。せっかくのマイナンバー制度が中途半端にならないだろうか。忘れ物は重い意味を持っている。

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=この項おわり



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