空き家バンク 民間で 変わる中国地方 in out 移住・定住を増やす(1) 2017/05/30 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「空き家バンク 民間で 変わる中国地方 in out 移住・定住を増やす(1)」です。





「日本から896の地方自治体が消滅する」。増田寛也元総務相らの衝撃的な推計発表から3年が過ぎたが、都市部への人口流出は止まっていない。第2次安倍政権の目玉のはずだった「地方創生」も尻すぼみの今、中国5県と各市町村の取り組みはどうなったのか。移住・定住促進の現状と、その課題を探る。

片付けまで支援

数々の映画の舞台となった広島県尾道市。その風景を成す山肌に連なる家々をよみがえらせる営みが続いている。急な坂が負担で街を離れる高齢者が後を絶たず、空き家となった家屋の借り手探しを担うのが尾道出身の豊田雅子さんが2008年に立ち上げたNPO法人「尾道空き家再生プロジェクト」だ。

尾道市は02年に「空き家バンク」を始めたが、07年には登録物件がゼロとなるなど機能しなかった。そこで、問い合わせが集中する週末や休日に職員が不在となるなどの「お役所特有の事情」(市関係者)を排除するため、09年から再生プロジェクトに運営を委ねた。

ただ、空き家には仏壇や家財道具が残り、片付けや移動も一苦労。持ち主がそんな面倒を承知で「貸してもいい、売ってもいい」という物件は少ない。再生プロジェクトでは売買・賃貸契約の成立後の空き家の片付け支援も手掛け、貸す側の負担を減らすことで活用を促している。入居者も、生活支援などきめ細かいサポートを実施、移住から定住につなげる。

この取り組みが功を奏し09年10月から17年3月までに181件が登録し、昨年度の8件を加え83件と全体の4割を超す物件で買い主や借り主が見つかった。平谷祐宏市長は、「かゆいところに手が届くサービスは民間ならでは。運営を委ねてからうまく機能するようになった」と満足げだ。

定住を促すにはまず、住まいから。山口市は6月、空き家などを改修し交流拠点とするプランを募集する。審査で選んだプランには最大150万円を助成する。「コミュニティー作りが移住につながる。アイデアではなく、実現を」と渡辺純忠市長。岡山県美咲町でも空き家活用に向け、古民家の売却、購入、双方が体験談を聞くセミナーなどを開く予定だ。

移住を考えていても「田舎暮らしをしたい、古民家に住みたいという人は多くない」。移住支援などを手掛けるボランティア団体「岡山盛り上げよう会(おかもり会)」の佐藤正彦代表はこう指摘する。東京・有楽町で21日に開いた相談会で約100人の参加者の人気を集めたのは岡山市中心部など、駅が近く店も多い地域。「都市の若い人は便利な駅近くの賃貸を求める人が多い」(佐藤代表)。求められているのは「普通の家」だ。

満室稼働を実現

岡山県和気町はそこに目を付けた。岡山市中心部から電車で30分のJR和気駅周辺には9月までに7棟36戸の賃貸住宅が建つ。オーナーは市が昨年導入した固定資産税分を助成する制度を活用した。すでに完成した5棟は満室で、入居者は「関東や関西から来た人もいるようだ」(和気町)。

これまで町に建つ新築賃貸住宅は、よくて年1棟。財務省から派遣された小西哲史総合政策監も、「満足できる部屋を探すのが大変だった」と振り返る。地方創生課の金谷憲次係長によれば、「町に住みたいのに、いい住まいが見つからずに諦めた人もいる」という。

移住者の「受け入れ体制」を整えたことで、流出超が続いていた和気町の社会動態は17年1~4月に限ると45人のプラスに転じた。4月の38人増は、調査を始めた1985年3月以降で最多だ。2025年までに社会動態ゼロを目指していたが、「大幅に前倒しできそう。人口減少も食い止められそう」(小西政策監)な状況に変わった。

おかもり会の佐藤代表は「若い人は賃貸、とがった感性の人は古民家、高齢者は中古物件と欲しがる物件は違う」と話す。移住・定住を考える人がどのような生活を求めているか。需要に合わせた住まいの提供が、人口増減の鍵を握っている。



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