突然の首相前面、舞台準備は周到 20年新憲法施行訴え 2017/5/7 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「突然の首相前面、舞台準備は周到 20年新憲法施行訴え」です。





 2020年に新憲法施行を目指すと宣言した安倍晋三首相。「静かな環境で議論する」としていた従来方針を棚上げし、悲願実現に向けて自ら改憲論議の先頭に立つ賭けに出た。「安倍1強」とはいえ、多少のあつれきが出るのは承知のうえでの周到な発言。長期政権を見据えた首相なりの計算が浮かぶ。

「新しい憲法を制定する推進大会」であいさつする安倍首相(1日、東京・永田町)

 憲法記念日前日の2日。翌日の「公開憲法フォーラム」の主催団体に首相官邸から1本の電話が入った。「明日朝に首相のビデオメッセージをお渡しします」。1カ月前に依頼したメッセージだが、連絡がなく「今年は直前の外遊もあって難しいのかもしれない」との見方が出ていた。

 首相はこのメッセージで20年の新憲法施行を表明したが、これを事前に知っていたのは今井尚哉首相秘書官ら数人のみ。「記者会見や国会答弁ではなく、ビデオメッセージというところに周到さを感じる」。自民党ベテラン議員は解説する。

 首相は憲法改正を公約に掲げる自民党の総裁だが、憲法順守義務を負う行政府の長。国会答弁では憲法改正は「憲法審査会の議論に委ねる」と繰り返し説明してきたのはそのためだ。自ら改憲の口火を切るためには別の舞台装置が必要だったというわけだ。

 発言内容も狙い澄ました感が強い。現行9条に3項を加え、自衛隊の存在を明記する案は「加憲」を訴える公明党が04年の論点整理に盛り込んだもの。「自衛隊の存在を憲法上認めるだけなら、公明党も反対しないはずだ」。先月上旬、首相は親しい国会議員に自信ありげに語った。

 改憲勢力である日本維新の会とは水面下で調整したフシはある。9条改正と並んで、維新が主張する教育の無償化に触れたのはその証左。同党の法律政策顧問を務める橋下徹前大阪市長とは昨年12月24日に会食し、憲法改正での連携で意気投合した仲だ。その橋下氏は4月27日に「自衛隊組織を合憲とする憲法改正は絶対に必要」とツイッターに書き込んだ。

 ではなぜこのタイミングだったのか。複数の関係者によると9条改正と20年の新憲法施行はかなり早い段階で腹を決めていた。環境権や緊急事態条項などが浮上する中、首相は「在任中に憲法改正をするならせいぜい1回。それなら最も本質的な9条を変えるべきだ」と昨年あたりから力説するようになった。

 首相は来年9月の自民党総裁選で3選を果たせば21年9月までの任期となるが、実際に政権の体力があるのは「ポスト安倍」に世間の関心が移る20年ころまで。それまでに改憲するなら実質3年だ。逆算すればぎりぎりのタイミングという計算も働いた。

 その総裁選も「安倍3選」はほぼ既定路線とはいえ、長期政権の「緩み」や「飽き」がこないとは限らない。国会では閣僚や政務官の不規則発言などが続出。学校法人「森友学園」の国有地売却問題では首相自らも攻撃を受けた。50~60%と高位安定の支持率が維持できる保証はない。

 党内引き締めには首相が得意の衆院解散をちらつかせるのが効果的だが、次期衆院選は来年の総裁選後という見方が強まる。首相は先月末「選挙もしばらくないから憲法でふかせるのもいい」と漏らした。改憲をぶち上げることで「緩み」が目立つ政権運営を勢いづかせられるとふんだ。

 計算ずくに見える首相の改憲発言だが、野党は反発を強める。そもそも憲法改正の手続きは与野党の合意をもとに進む前提で、与野党対決の改憲は想定していない。公明党からも「支持母体の創価学会含めて簡単にまとまる話じゃない」との声が上がる。施行から70年の憲法を巡る論議は新たなステージに入る。



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