第1部 異次元の領域(4)やまぬ「利回り狩り」逃げ水の果実、 揺らぐ年金 2017/11/17 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「第1部 異次元の領域(4)やまぬ「利回り狩り」逃げ水の果実、揺らぐ年金」です。





 「ゼロでも御の字」。大手銀行幹部は独立行政法人、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が9月に実施した資金調達の入札を振り返る。落札した金融機関は金利「ゼロ%」で札を入れた。

バンクーバーの高層マンションは住人のいない部屋が多い

 日銀がマイナス金利を導入して2年近くがたつ“緩和先進国”の日本。日銀に預けていては損になる銀行にとり、政府保証がつくJOGMECへの融資はだぶつくマネーの置き場としてもってこいというわけだ。

債務不履行でも

 プラスの利回り消滅は欧州でも鮮明だ。スイス、ドイツなど信用力の高い国のほかスペイン、アイルランドなどかつて債務危機にあえいだ国も期間の短い国債の利回りはマイナスだ。

 米国も長期金利は2%半ばで低いまま。景気拡大の持続力は不透明な上、米連邦準備理事会(FRB)議長に来春就くパウエル氏は利上げを急ぎそうにない。10年物米国債と2年物の利回り差は1%もない。横に寝た利回り曲線が右肩上がりに起きる兆しはない。

 イールド・ハンター。カネ余りは世界中で少しでも高い利回りを求める「狩人」を生んだ。アルゼンチンが6月に出した100年国債は募集の3.5倍の応募を集め瞬間蒸発した。過去200年で8回の債務不履行との不名誉な歴史も、7%超の「高利回り」を前には顧みられなかった。落札者には世界最大の運用会社米ブラックロックなどの名がささやかれる。

「4.5京円が不足」

 「この2棟は48時間で完売した」。カナダ、バンクーバー。タクシー運転手のファザーリさんは高層棟を指して話す。主な買い手は中国など海外勢で、住民不在の物件は治安に影を落とす。州は外国人の取得に上乗せ課税するようにしたが相場の騰勢は止まらない。

 2016年末の世界の資産運用残高は70兆ドル(約7900兆円)。年金資産増や新興国の所得増で、残高は金融危機前の07年から5割増えた。世界の国内総生産(GDP)とほぼ同規模に膨らんだ資産残高は、金融のプロの手に余る奔流となって市場にのしかかる。

 50年には日米中など8カ国で退職後に必要な貯蓄が400兆ドル(4.5京円)不足する――。世界経済フォーラムは一段の長寿や今の60~70歳の退職年齢を前提にこうはじく。米国では債券の運用利回りが過去平均の実質3.6%からこの先は同0.15%に下がる見通しで、こうした利回り低下が貯蓄不足を膨らませる。年金や雇用の制度見直しは全世界で待ったなしだ。

 「将来への備え」と消費を抑え資産運用にお金を注げば注ぐほど利回りは下がり、見込める果実は細る。未曽有の規模の年金マネーが逃げ水を追い続ける。



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