第4の携帯、楽天の勝算 問われる「素人」の直感 2018/03/04 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「第4の携帯、楽天の勝算 問われる「素人」の直感(編集委員 関口和一)」です。





「携帯電話事業のゲームチェンジャーになる」。スペインの携帯見本市で先週、楽天の三木谷浩史会長兼社長は通信事業への参入について熱く語った。楽天は前日に総務省に携帯用電波の取得を申請したばかり。ネット通販や金融のサービスと融合すれば「後発でも戦える」と訴えた。

一方、既存の携帯大手からは疑問の声が上がる。楽天は携帯事業参入に伴い、「最大で6千億円を調達する」と説明するが、KDDI(au)の田中孝司社長に「それで設備投資がまかなえるほど通信事業は甘くない」と一蹴された。

実は携帯市場で新規参入者が冷ややかに見られたのは、初めてではない。

米アップルのスティーブ・ジョブズ氏が2007年に「iPhone(アイフォーン)」を発売した際も、「通信は素人」と既存事業者は声をそろえた。通信速度が遅い当時の携帯電話網ではiPhoneは動きが鈍く、通信費もかさむと考えられたからだ。

だが、携帯電話網の通信速度が上がるにつれ、みるみるユーザーを拡大した。

ほかにも理由がある。

日本の携帯電話端末にはNTTドコモの「iモード」があったが、海外の端末は機能が乏しかった。それを「携帯ネット」の入り口に変えたのがアップルだ。

技術はエクスポネンシャル(指数関数的)に進化するが、専門家を自負する経営者ほど自身の経験で判断しリニア(直線的)に進歩すると考えがちだ。当時、携帯の主役だったノキア(フィンランド)が衰退したのも同じ理由によるだろう。

そう考えると、三木谷氏の自信もうなずける。携帯大手はかつて基地局に「兆円単位」の資金を投じたが、当時は半径数キロメートルをカバーする設備が必要だった。現在の基地局は半径が数百メートルの「スモールセル」が主流。この間の技術革新でコストも格段に下がった。通信品質に対する考え方も過去は音声が途切れないことが重要だったが、データ通信が主流の今は多様な接続手段で補い合える。

そして、楽天には別の強みもある。通信サービスだけでなく、その上でやりとりされるコンテンツやサービスだ。電子書籍の「コボ」や対話アプリの「バイバー」などを手がけるほか、ネット通販で得たポイントを通信料にあてるサービスもある。国内の楽天会員1億人に対し、こうした強みを生かせれば、勝算も見えるのではないか。

米国では、AT&Tなど携帯大手が自前コンテンツを定額で提供しサービスを競う。国内でもソフトバンク系のワイモバイルは、オークションなどに参加できる有料の「ヤフープレミアム」会員資格を契約者に無償で提供するなど、様々なサービスと通信を融合する動きが広がっている。

楽天の課題は2つある。1つは足りない回線をドコモからいつまで借りられるか。そして免許条件となる人口カバー率を予定通り達成できるかだ。ドコモは回線提供で敵に塩を送ることになるが、楽天は基地局を結ぶためにNTTグループの光回線を使う。NTTには新たな顧客でもある。

「素人」の直感と「玄人」との交渉。三木谷氏の手腕が問われている。



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です