米、アジアへの積極関与強調 中国寄り懸念の払拭狙う マティ ス米国防長官、安全保障会議で講演 2017/6/4 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「米、アジアへの積極関与強調 中国寄り懸念の払拭狙う マティス米国防長官、安全保障会議で講演」です。





 【ワシントン=永沢毅】マティス米国防長官は3日、シンガポールで開かれているアジア安全保障会議で講演し、アジア太平洋地域への積極的な関与の継続を表明した。北朝鮮の核・ミサイル問題の解決への決意を示す一方、南シナ海での中国の強硬姿勢を強く批判した。北朝鮮問題を巡り、協力を引き出す思惑から中国寄りに傾くトランプ米政権への地域の不安を払拭する狙いがある。

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アジア安全保障会議で講演するマティス米国防長官(3日、シンガポール)=小川望撮影

 マティス氏の講演は約30分で、質疑にも答えた。トランプ米大統領には安全保障を経済外交の取引材料とする危うさがつきまとうのに対し、マティス氏は冷徹な安全保障観で知られる元軍人。トランプ政権の外交・安保政策の要だ。これまでも日本や韓国などアジアを歴訪しているが、事実上初めて政権のアジア戦略を包括的に語った。

 マティス氏が今回、とりわけ力点を置いたのは、台頭する中国への対応だった。「ルールに基づく秩序を阻害している中国の行動を受け入れることはできない」。マティス氏は中国の南シナ海での人工島建設を厳しい言葉で非難し、「北朝鮮は差し迫った脅威だが、だからといって他の戦略的問題から目を背けてはならない」と付け加えた。

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 米は北朝鮮問題で協力を得る見返りに南シナ海問題に目をつむるのではないか――。日本や東南アジア諸国にはトランプ流の「取引外交」への懸念がくすぶっている。

 オバマ前政権はアジア太平洋地域の外交・安保を重視する「リバランス(再均衡)」を掲げ、域内の同盟国との関係強化に取り組んできた。ところがトランプ氏は北朝鮮の核問題の解決を優先し、「もし中国が北朝鮮問題を解決するなら、貿易問題で米国とはるかによい取引ができると習近平国家主席に説明した」と明言。中国の為替操作国の指定を見送るなど融和姿勢への傾斜が目立つ。

 マティス氏は、内向き志向のトランプ政権でアジア太平洋地域に「力の空白」が広がるのではないかとの懸念を拭うことに腐心し、講演では南シナ海での軍事拠点化や一方的な現状変更に反対する姿勢を表明。中国が敏感に反応する台湾への武器供与にも言及した。

 緊迫が続く北朝鮮問題への対応を巡っても、中国の役割を強調した。「中国の習国家主席の『全ての国が責務を果たせば、北朝鮮の核問題は解決する』との発言に同意する」と強調。さらに、北朝鮮に対して外交・経済両面で圧力を強化する方針を明言し、日韓両国と足並みをそろえた。

 「言葉には行動が伴わなければいけない」などと、経済制裁の強化など具体的な行動で示すよう中国に注文をつけた。同時に「結果志向的」な米中関係をめざすとして、中国との決定的な対立を避け、協力を引き出す余地はなお残した。

 もう一つ、マティス氏が訴えたのが、トランプ政権内の「結束」だ。

 講演では、トランプ氏のほか、アジアを歴訪したペンス副大統領、ティラーソン国務長官ら政権幹部のアジア政策に関する発言をたびたび引用した。「米国は太平洋国家だ。将来も変わらない。米国はアジア太平洋地域との関係強化を優先する」。マティス氏の発言には政権のアジア政策の意思が一枚岩であることを強調する狙いがにじむ。

 ただ北朝鮮は5月に3週連続で弾道ミサイルを発射し、挑発行為を続ける。中国も南シナ海の軍事拠点化を進め、米に屈するつもりはない。今回のマティス氏の警告が通用する保証はない。

 米軍は5月下旬、現政権で初めて「航行の自由作戦」を実行し、対中けん制を行動で示した。もっとも、米軍による作戦の実行提案を政権がたびたび却下したと取り沙汰されたこともあり、日本などの同盟国には米中接近への疑心暗鬼が残る。

 トランプ氏は先の欧州訪問で「米国第一」の原則を振りかざし、ドイツなど伝統的な同盟国とのぎくしゃくした関係を露呈した。「マティス氏は信頼できるが、トランプ氏は信頼できるのか」。マティス氏の講演後、別の議論の場でこんな質問が出ると、会場は拍手でわいた。トランプ政権の政策の一貫性への疑念はなおくすぶっている。



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