米、パリ協定離脱表明 孤立の代償、米自身に 温暖化対策 の潮流変わらず 米国勢、技術で後れも 2017/6/3 本日の日本経済 新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「米、パリ協定離脱表明 孤立の代償、米自身に 温暖化対策の潮流変わらず 米国勢、技術で後れも」です。





 【ワシントン=川合智之】トランプ米大統領は1日、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱を表明し、地球の未来を守るという国際社会の努力に冷や水を浴びせた。だが企業や消費者が環境を重視する世界の潮流はもはや変わらない。世界経済の4分の1を占める超大国が孤立を選べば、技術革新の停滞や指導的地位の低下といった代償が自国に跳ね返る恐れがある。

 「パリ協定は不公平。他国が米国を経済的に利用する仕組みだ」。トランプ氏が1日、ホワイトハウスで読み上げた離脱声明に、国際社会に語りかける言葉はなかった。

 パリ協定の最大の成果は、世界の200近い国と地域が温暖化ガスの排出削減という共通の目標に取り組む枠組みをまとめたことだ。非参加国はシリアとニカラグアだけ。合意に尽力したオバマ前大統領は「現政権は未来を拒絶する少数の国に加わった」と非難した。

 かつてブッシュ(子)米政権は2001年、温暖化ガス削減を先進国に義務づけた京都議定書から離脱。参加国の排出量は世界の1割強にとどまり、議定書は実効性を失った。この反省からパリ協定は法的拘束力を持たせず、途上国を含めた全ての国に参加を促した。

 各国は排出削減目標を自主的に決められる。このため排出量2位の米が抜けてもすぐに大きな影響が出るわけではないが、目標達成へ汗をかく機運がしぼむ恐れは強い。途上国の対策を援助する100億ドル(約1兆1千億円)の「緑の気候基金」に30億ドルを拠出するというオバマ前政権の約束も、トランプ氏は「払わない」とほごにした。

 トランプ氏は協定の「再交渉」も提案。これに対し、ドイツのメルケル首相ら独仏伊の3首脳は即座に共同声明で「再交渉できない」と拒んだ。

 米国内でさえパリ協定残留派は7割弱、離脱派は1割強との世論調査がある。ロシアとの不透明な関係を巡る「ロシアゲート」疑惑に直面するトランプ氏は、支持層である石炭産出地域の受けを狙い、「米国第一」という原則にしがみついた。

 だが消費者の環境意識は高まり、世界で活躍する企業は未来の技術やエネルギーの開発にヒトもカネも投じている。その潮流に背を向ければ「技術革新などで後れをとりかねない」と、みずほ総合研究所の安井明彦欧米調査部長は指摘する。

 アップルやグーグルなど米西海岸のIT(情報技術)大手を中心とする25社は1日、米主要紙への連名の意見広告で「クリーンエネルギーへの投資は雇用と経済成長をもたらす」と訴えた。米自動車メーカーも世界市場をにらみ、電気自動車(EV)開発などを急ぐ。

 トランプ氏が「雇用を守る」という石炭業界は少数派だ。米産業界全体からみれば、足元の米国が世界とは異質な市場になり、「どの方向に進めばいいのか方針を立てにくくなる」(安井氏)。

 地球温暖化を「でっちあげ」というトランプ氏は、10月からの18会計年度予算案でEV開発を支援する部局などの予算を大幅に削減した。米国の科学技術予算は16年に15兆円余りと、すでに中国(14年時点で約19兆円)を下回る。頭脳流出を見越し、フランスのマクロン大統領は1日、米国の科学者に「仏で一緒に働こう」と呼びかけた。

 さらに影響が大きいのは、米国の世界のリーダーとして信頼の失墜だ。

 パリ協定は米中協調の象徴だった。オバマ前大統領が中国の習近平国家主席と共同で参加を呼びかけ、世界的な機運を盛り上げたからだ。米がその役割を自ら捨て、排出量首位の中国が国際社会を主導するかのように振る舞う隙が生じている。

 「多国間ルールを支える必要がある」。中国の李克強首相は2日、訪問中のブリュッセルでの講演で訴えた。欧州連合(EU)のトゥスク大統領は李氏との会談後の共同記者会見で「我々は米国のパリ協定離脱は大きな間違いだと確信している」と強調。中国が進める温暖化ガスの排出量取引制度の導入を欧州が支援するなど協力を深める。

 パリ協定は発効から4年後に締結国が離脱できると規定しており、米国が手続きを終えるのは早くて20年11月4日。トランプ氏が再選をめざす次回大統領選の翌日だ。離脱の是非を争点にする狙いが透けるが、孤立を選んだツケが自身に回ってくる可能性は消えない。



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